いま製造業で第4次産業革命として「Industry(インダストリー)4・0」の構想が注目を集めている。ドイツ発の新しいものづくり提案として日本でも関心が高まっているが、このほどドイツからインダストリー4・0プロジェクトの技術イニシアチブで、スマートファクトリーKLの会長デトレフ・チュールケ氏が来日して記者会見した。
■インダストリー4・0で、ドイツが日本企業に期待することは。
チュールケ氏
生産の自動化技術では、ドイツと日本は同じレベルで競いながら過去90年間続いてきた。そして、いまは両国の企業が双方の国で販売している。現在は自動化技術が新しい時代に入ろうとしている。それがインダストリー4・0で、今後は日独の企業が共同で自動化技術を進めていきたい。
日本のインプロダクトの哲学をドイツも学んで実現してきた。しかし、現在は技術転換期に来ている。生産技術が複雑化し、製品サイクルも短くなっていることから、製品サイクルに生産技術が追いつけなくなっている。同時に製品サイクルが短くなっていることでエンジニアリングサイクルも短くする必要がある。
■インダストリー4・0が目指すのは何か。
チュールケ氏
インダストリー4・0のコンセプトは、様々な標準化されたネットワークから『プラグ&プレイ』にして、すぐに使えるようにすること。一つ一つの機械のコンポーネントをつなぐだけで、複雑な操作をしなくても使えるようにすることだ。コンポーネントを高度化し標準化することで、エンジニアリングも容易になる。
■インダストリー4・0の欧州での評価と、ロードマップは。
チュールケ氏
インダストリー4・0はドイツの革命で、これを世界に広げたいが、EUは慎重である。財政的な面での問題もあるからだ。いまEUでは「Factor es of the Future」という中でこの構想を実現しようとしている。インダストリー4・0は急に広がるのではなく、製品に少しずつ入って進化していく。そして、様々な学術、産業、ユーザーへ広がっていくだろう。
2015年頃にはプロトタイプとなる製品が登場し、広く普及するには10~15年かかる。
■インダストリー4・0に日本企業が入ることができるのか。
チュールケ氏
インダストリー4・0の目的は競争力の保持である。中国など新興国が台頭しているなかで、対抗していく必要がある。生産効率を上げ、改善していくことで最終的に競争力を高めていく。このコンセプトをドイツ単独で進めても意味がない。産業の新しいパラダイムなので、日本などが参加してくれることが必要だ。スマートファクトリーの中で、日本の企業もぜひ参加して欲しい。
日独には共通の問題がある。今後、少子高齢化で人手不足になることである。インダストリー4・0は生産技術で生産性を上げ、人手に依存しなくても生産力を高めることができる。同時に日独ともエネルギー資源に乏しい国である。省資源化に取り組むという意味でも意義がある。
■米国での関心度合いは。
チュールケ氏
「インダストリアル・インターネット」というコンソーシアムをインテル、AT&T、シスコシステムズ、GE、IBMなど米国ビッグ5で作って活動を進めている。オバマ政権以降、工場が国内回帰し、再工業化されつつある。
■インダストリー4・0の実現は、標準化が鍵を握ると思うが。
チュールケ氏
インダストリー4・0はプラットフォームの全体標準化である。今後個別の標準化となってくるが、各国の産業構造によって異なってくる。ドイツは大企業もあり、中小企業もある。シーメンスなどの大企業は自社で規格を作っていくこともできる。中小企業は、それぞれの接続性を維持することを考えていく必要がある。米国や韓国では複数の大企業が進めるだろう。