日本配電制御システム工業会(JSIA、丹羽一郎会長)は、制御盤製作の省コスト化として、個別配線ではスプリング端子方式による接続の採用を進めていくことにした。これに関連し、配線のマークチューブに脱落しない新しい製品開発をメーカーに促していくことや、スプリング端子でのスリーブ加工の工数が増えない技術・工法についてもメーカーに開発を求めていく。制御盤製作において、日本の国際競争力強化と国際標準化への対応が課題になっている中で、今回のJSIAの取り組みは、今後の動きに弾みがつくことが期待されている。
JSIAの制御・情報システム部会(田原博部会長)は、2010年6月から制御・情報システム委員会(天野敏夫委員長)で制御盤製作の合理化の調査研究に取り組んでいる。具体的には、「配線接続の合理化に関する調査研究」と「筐体部材、機器取り付け合理化に関する調査研究」の2つのテーマで活動を行っている。
今回はテーマの一つである「配線接続の合理化に関する調査研究」の活動が終了した。12年9月に2年間の活動を第1次報告書としてまとめた後、JSIA会員やユーザーなど関係団体に幅広く意見を聞きながら議論して、今回最終報告書をまとめた。
今回の報告書では、制御盤の個別配線接続方式にはスプリング端子方式が効果的であるとされたことが大きなポイント。
日本の制御盤配線方式は従来から、より線に圧着端子ねじというのが定着しているが、配線工数の削減、振動による緩みの防止による配線品質の安定化、増し締め作業と機器交換時の誤配線防止などが求められる中で、スプリング端子方式の優位性が評価されてきている。
■接続時間を短縮
JSIAでは両方の接続方式を比較実験した結果、スプリング端子で、接続工数では丸形圧着端子が31%(熟練者)~52%(非熟練者)、Y形圧着端子が22%(熟練者)~45%(非熟練者)の合理化効果が得られた。しかも、熟練者・非熟練者の間で作業時間や接続品質に差が生じないことも明らかになった。
さらに、素線のばらけによる接続障害も、スプリング端子など欧州方式にすることで回避できるということも判明し、今後はスプリング端子方式を制御回路配線の基本方式の一つとして採用・普及させるという結論を出した。
■関連団体も賛意
こうした結論に対し、輸出比率の高い機械業界や工場の世界展開を進める業界、ねじの緩みを経験している車両や信号設備などの業界は、スプリング端子の採用を進めている。
機械製造業者団体の日本工作機械工業会、日本食品機械工業会、日本包装機械工業会、盤用機器製造者団体の日本電機工業会などは賛意を示し、エンドユーザーの自動車会社や碍子製造会社も普及を望んでいる。
これに対し、電力設備関係や国内設備が主な所は、技術情報が足りない、信頼性などに不安、盤の規格などに具体的記述がされていない、独自にこれまでの設備仕様書や習慣を変更する勇気がないなどの消極的な意見が出ている。
■技術情報を提供
JSIAではこうした意見に対し、技術情報を積極的に提供していくとともに、技術標準の見直しなどを働きかける。
また、より線の端末処理は圧着という、圧着しないことへの不安や抵抗感を解消するために、スリーブを圧着しても工数が増えない技術・工法を求めていく。
これに関してはすでに対応電線がIEC規格であることから、日本では課題がまだあるものの、配線の剥き作業と圧着作業を1台で行え、作業時間も2秒という工具が販売されている
すでにスプリング端子を採用している業界では、電線からマークチューブの脱落が懸念されている。
そこで、挿入しやすく、脱落しにくいヒダ付きマークチューブも製品化されている。チューブ内のヒダがクッションになりながら電線を押さえるため、挿入しやすく、ずれ落ちることもない構造となっている。
今回の報告ではこのほかに、「多数の配線を伴うPLCのIO接続に用いるコネクタ仕様の統一・標準化」「中位の接続線数を持つ機器のソケット、もしくは着脱機能付き端子接続化」「盤外制御線工事対応のための盤内スプリング端子―盤外ネジ端子装備の端子台の製品化」「制御用配線の最小サイズ規定の見直し」などについても検討されている。
JSIAでは、引き続きもうひとつのテーマである「筐体部材、機器取り付け合理化に関する調査研究」を継続して行っていく。