販売員は、顧客や新規に会う見込客から何か情報を取ろうとして質問をする。その際の能動的質問は、何をつくっているか、どんな仕事をしているかを知ろうとするところから始める。
面会している相手は大雑把に何々をつくっている、何々を主にしている、という回答をする。後日、もう少し突っ込んで知ろうとするならいいのだが、ほとんどの販売員はその回答で相手のことを自分の経験に基づいてイメージしてしまう。
長い間担当している顧客であるなら、様々なアプローチがあって多少は顧客のことを把握しているのだろう。それでも顧客からのアプローチは販売員がやってきた実績によることが多いので、年月をかけても意外と顧客の一面しか見えていないのである。だから顧客だからと言ってもルーティンワークだけのつき合いではダメなのであって、相手にもっと興味をもって接することが大事なのだ。
情報をとるためには、興味をもつ対象を明確にして質問することが情報入手の基本動作である。そうすれば情報の質・量とも増え、経験とともに営業力が格段についてくる。
ものづくり企業は、日本経済の発展とともに拡大し続けてきた。1990年のバブル崩壊を契機に拡大一方から様々な方向に変化してきた。経済の一直線的伸びは止まり、景気の先行きは不透明という言葉が交わされるようになって久しい。不透明感の先には今までとは違う解決手段が待っていた。戦略的変更であり、技術、組織の変化である。
営業マンにとっても、顧客との関係を仕切り直しする絶好の機会が巡ってきていた。自分達の顧客はどのような転換を考えているのかという興味をもって、コミュニケーションを仕掛けていればいいからだ。コミュニケーションをする相手にもよるが、小さな変化には気づかないで、特に変わったことはないと言っていた相手も大きな変化には気づくはずだ。
今までとは異なった不連続の変化であるから顧客の方から積極的に話をしてくれるだろうし、販売員が仕掛けたコミュニケーションによって「えっ!
そんなこともやっていた人だ」というような新事実の発見もするだろう。したがって今こそ初心に返って、勝手に相手のイメージをつくってしまわずに、幅広く顧客の情報入手に努めるべきである。
まずは、顧客に関してほとんど知っているという先入観を捨てることから始める。顧客が何をつくっているかを大体知っているとすれば、従来の流れで聞いていく。最初、何をつくっているかと尋ねて返ってくるのは主力製品のことである。
主力製品であればラインアップがあるかもしれない。どのようなラインアップがあるのかと尋ねる。その上で主力製品に絡む周辺製品は作っていないか、あるいは主力製品を使った製品はつくっていないかを尋ねる。例えば、各種モーターを内蔵させて、ゴルフカートを作ったり、フードプロセッサーを作っているようなことである。
他にも主力製品をデバイスとして使い、システム受注する場合もある。例えば振動計メーカーがデータを遠方に送る通信機器やデータロガーを含めてシステム受注したり、音響のミキシングメーカーがアンプをはじめとして構内放送のシステムを受注するようなことである。この他にも、業種を超えて何かつくり出していないかを聞くことも大事だ。
市場の縮小や成熟が顕著に表れている業種は、じり貧状態になっているので、今まで持っている技術に何かを加えて他業種への参入構想を練っている企業も多々見られる。そういう時代になりつつあるのだ。(次回は1月7日付掲載)