PLC(プログラマブル・コントローラ)の市場が好調に推移している。半導体・液晶製造装置、工作機械、自動車製造関連での需要が活発で、内需・外需とも大きく伸びている。技術面も、小型・高機能化と処理スピードの高速化などに加え、パソコン環境との融和を図るC言語コントローラなども普及が進んでいる。
日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、PLCの2013年度(13年4月~14年3月)の実績は、前年同期比111・4%の1129億円と2桁の伸びを見せた。14年度も上期は同115・3%の614億円と高い伸びになっている。特に輸出は122・1%と20%を超え、大きく伸長。NECAでは通期で110・8%の1251億円を予測しており、完全な回復基調になっている。円安効果もあり、輸出は2桁の伸びを維持する見込みで、しばらくこの状態が続きそうだ。
PLCの出荷額はピーク時には約1350億円あったが、それに比べるとまだ約100億円の差があるが、海外生産も増えていることから、全体では過去最高レベルの状況で推移していると言えそうだ。
■リニューアル投資活発
PLCの市場環境は、国内外とも好調で、国内は半導体・液晶製造装置、工作機械、自動車製造関連が大きく牽引しており、加えて省エネや新エネに絡んだEV・電池・ソーラー関連、インフラ整備関連、ビル建設などの投資増も直接・間接的に追い風になっている。プラント関連は新規の案件は少ないものの、設備の老朽化や生産効率の向上を目指したリニューアル投資が行われており、DCSからPLCへの置き換えも加わり、需要を押し上げている。
海外も自動車関連の投資が継続していることに加え、スマートフォン関連の投資も意欲的に行われており、輸出を支えている。特に米国は製造業回帰が続いて堅調な投資が継続しており、加えてシェールガス開発などの資源開発に伴う投資も意欲的なことから、PLC需要にも波及効果をもたらしている。
海外では、新興国での人件費上昇が続いていることから、自動化生産に向けた投資が増加していることもPLC需要にとってはプラスになっている。
半導体や電子部品、液晶などの生産では、さらなる高速化、多品種化、情報化が要求され、これら装置制御を行うPLCや各種装置コントローラの役割は多様化している。装置・設備の制御コントローラでは、シーケンス命令を高速に実行するだけでなく、「モータ制御」「温度制御」「情報化に向けたネットワーク」といった装置・設備を取り巻くあらゆる処理で高機能・高精度化を要求されている。中でもプログラミング言語の多様化ニーズは高い。電気技術者にはC/アセンブラー、機械技術者にはラダー、生産技術者にはBASICといったように、得意な言語で記述できるような配慮が進んでいる。この場合、高速処理はラダー、浮動小数点/文字列演算はBASIC、HMIはAT互換といった用途に合わせた選択も可能になってくる。
このうち、C言語搭載のコントローラが注目されている。半導体や液晶製造分野などで良く使われているマイコンボードやパソコンベースのC言語環境を、PLCで実現できるのが大きな特徴だ。これに加え、パソコンやマイコン用部品の生産中止による管理コスト増大なども課題となっており、PLCで汎用のC言語プログラムを実行できるニーズが高まっている。特に、公共関連分野では支持する声が多いようだ。
■国際標準言語を活用
プログラミング言語の標準化、ソフトウェアの再利用、開発期間の短縮などに向けて、国際標準言語「IEC61131―3」を活用する動きも活発化している。産業用オートメーション分野の合理化につながるものとして、欧州を中心に普及が進んでおり、日本でもJIS規格化(JIS
B3501―3503)されている
IEC61131―3は、様々な業種・用途、色々なスキルを持った技術者に対応できるように5言語を標準化している。IL、ST、FBD、LD、SFCの5つを一つのプログラム内に混在して使用できるのが大きな特徴。ベンダーに依存しないソフトウェアの開発ができることで、コンピューター技術者も参加できるようになり、しかもソフトウェアのため機密性を保護しながらの作業が可能になる。
IEC61131―3の普及に向けたワールドワイドな団体として「PLCopen」も活動を行っており、日本にも支部がある。
■ウイルスへの対応策も
最近は工場やインフラシステムなどへのコンピューターウイルス攻撃が懸念され、制御システムセキュリティへの取り組みが強まっている。以前のような製造現場がインターネットなどに繋がっていないことが多かった時代から、現在はネットワークに繋がるのが当たり前の時代になり、コンピューターウイルス攻撃にさらされる頻度が急速に高くなっている。USBからの感染も増えるなどPLC周辺での危険性は高まっている。
制御システムセキュリティに対しては、関連工業会でも対応策を進めているが、常に危険性にさらされていることは留意する必要がある。
PLCが市場に登場して30年以上が経過しているが、PLCの機能、コスト効率は年々向上している。形状の小型化が進み、設置スペースの削減は当然であるが、以前は高級機種での搭載であった機能が、最近は中級や簡易タイプの機種でも簡単に実現できるようになって来ていることから、PLCをリニューアルしたほうがプラス効果につながる。
■買い替え需要を促進
国内では、買い替え需要を積極的に推進するPLCメーカーが目立つ。しかも、PLCだけでなく、工場設備全体の省エネ化につながるという提案でのリニューアル化は、比較的すんなり受け入れやすい状況下にある。
PLCのリニューアルを簡単に行えるツールを充実させているPLCメーカーも多く、これを機に周辺の制御機器もすべて自社の製品に統一してもらえるチャンスとして、専用のカタログを用意しているところもある。
PLCを取り巻く環境はパソコンやプログラマブル表示器などと使い分けされながら、市場の底上げが進むものと予想され、今後もグローバル市場で拡大が見込まれている。