新年を迎えたことで、あの東日本大震災から、早や4年が経とうとしています。遅々として進まなかった復旧も、官民一体となった復興活動により、新しい東北の創造に向けた取り組みが着実に進み出しました。一方、福島第一原発については、廃炉に向けて、乗り越える壁が非常に高く、現有技術の粋を集めても、長期化は避けられない状態です。困難な課題が多々残されていますが、将来のためにも、一歩一歩前進することを願っています。
さて、昨年のわが国の経済環境は、4月に実施された8%への消費税引き上げによる個人消費の落ち込みが、想像以上に大きく、第1第2と2四半期続けてのマイナス成長となりました。その結果、財政再建のために、政府が最低限必要と考えていた消費税10%への引き上げは、一年半先送りされました。
アベノミクスの成長戦略として、数々の第3の矢が放たれ、昨年10月に行われた日銀の大胆な金融緩和策第2弾も功を奏し、為替は円安に、株価は株高に、それぞれ大きく動きました。これらフォローの風も手伝い、グローバルに事業を展開している大企業の多くは、過去最高の業績を上げつつあります。
その半面、円安により原材料や燃料など輸入価格が上昇し、中小企業や家計には負担増となる影響もあり、賃金アップが物価上昇に追いついていない状況も起きています。そのような中、消費者は、長年続いているデフレ圧力や、100年に一度と言われたリーマンショックの影響が残るなどして、消費行動が慎重になっていると言わざるを得ません。
こういったことからも、今年は景気を好循環させ、消費者マインドを改善させるために、節目となる大切な一年と言えます。法人税引き下げや、投資を促進させるための税制の改革、女性活躍を主とした雇用政策、地域経済活性化による地方創生などの施策を早期に実現させ、デフレを脱却することにより、日本が再興されることを期待しています。
さて、私たち日本フルードパワー工業会は、昨年9月に3年ぶりに「第24回IFPEX
2014」を開催しました。「超える技術、価値ある未来のものづくり」をテーマに、会員各社による新たな提案やデモンストレーションなどを通して、フルードパワー産業の新技術や新製品を、改めてアピールすることができたと思います。また油圧、空圧とならび、新しい力として注目される水圧システムにもスポットを当て、産学連携コーナーや学会セミナーを充実、海外メーカーの出展など、フルードパワーの新たな魅力を発信することができました。
当業界の国内需要は、公共事業や復興事業による需要の押し上げに、産業競争力強化法による設備投資の増加も加わり、油圧機器と空圧機器ともに前年対比5~10%伸びております。一方、外需についても一部の新興国では経済が停滞しているものの、自動化のための投資が本格化してきた中国市場や、経済回復が続く北米市場、新たに期待される中南米市場やアジア新興国など、明るい兆しが見えてきています。私ども日本フルードパワー工業会は、長きにわたり築いてきた技術と製品を通して、グローバル社会に貢献することが求められています。国内では、海外工場に負けない生産効率の追求、人口減少による労働力不足の解消、女性の社会進出に欠かせない安全と安心の提供などに寄与することができます。そして、地球温暖化や大気汚染など、地球規模で早急な対策が必要な環境保護につながる取り組みも、私どもがグローバルに貢献できるテーマだと思います。
また、世界経済のグローバル化がさらに進む中、TPPなどの経済連携もますます拡大し、我々を取り巻く環境は、大きく変化してきます。工業会としても、日本の政府機関や現地の工業会団体と連携し、各国の市場動向やリスクの把握を行い、タイムリーに情報提供することで、会員企業の海外事業展開をしっかりと支えて参ります。
昨年は青色発光ダイオードの開発により、3人の日本人がノーベル物理学賞を受賞されました。世界中の人たちが幸せを感じる素晴らしい開発だと思います。日本フルードパワー工業会も、世界中の人たちの暮らしを豊かにするために、ありとあらゆる所で役に立てるよう、さらなる努力をしたいと思います。
20年には東京五輪が開催され、27年にはリニア新幹線が開業します。世界が注目するこれらの大きな事業は、日本経済に、必ずより良い影響を与えるはずです。この千載一遇のチャンスを生かし、私たちの子孫が安心して暮らすことのできる国を築くことが、我々に与えられた使命ではないでしょうか。
日本フルードパワー工業会として、皆さん一人一人の力をお借りしながら、一歩先を見据えた価値観の創造に努めて参りたいと思っています。