中部地区の経済動向は、中部経済産業局の最近の管内総合経済動向によると、緩やかに改善しているものの、一部に足踏みが見られる、となっている。
先行きについては、各種政策の効果が生産や所得、投資の増加につながることが期待されるが、世界経済の下振れ、原材料等価格の動向、為替の動向、海外現地調達の進展による国内生産の減少、中小企業の経営環境の悪化などに注視が必要、ということで、楽観視できない状況にあるといえる。
トヨタ自動車の2014年度第2四半期の国内外を合わせた自動車の連結販売台数は、447万7000台で、前年同期比0・2%増加しているが、国内販売台数は103万台で前年同期比6・4%減少している。
しかし、好調な企業業績を受け、国際競争力強化に向けた設備投資や研究開発投資は堅調に推移している。
設備更新需要が活発
一方、中部地区に集積している金属工作機械メーカー主要8社の総受注高は、14年11月分で417億5900万円(前年同月比16・5%増)と3カ月連続で前年を上回っており、好調が続いている。省エネ・合理化対応などの設備更新需要が高まっていることが要因だ。
こうした背景のもとで、中部地区のFA流通商社では、新事業、新分野の開拓に力を入れている。トヨタ系の大手自動車部品メーカーがこのほど農業ハウスの空調管理制御システムなどを開発、アグリ関連ビジネスに参入したが、米の価格が下がり、TPPなど自由化の波で農業の収益力向上が叫ばれる中、アグリビジネスが狙い目となる。
オランダ式水耕栽培技術を活用したトマトの生産販売を行う農業生産法人を設立した商社もある。
遊休地活用のビジネスも
中部地区は遊休地、休耕地など余剰の土地も多く、そうした土地に太陽光パネルを設置したり、太陽光で暖まった温水を温室で循環させたりするビジネスも考えられている。これらに関連する商材が伸長しそうだ。
多彩な製品を供給
エンジニアリングビジネスを強化するためには、幅広いニーズへの対応力を向上し、問題解決に取り組みながら、付加価値の高い製品、新事業関連の新製品を顧客に提案、システム化された多彩な製品を供給することが必要だ。製造部門を有する商社では、納期、コスト対応力と技術力、開発力を強化することも欠かせない。
海外での事業展開としては、国内、海外との連携を密にしたグローバル対応の推進、取引先の海外生産への対応強化が必要だ。現地での設備立ち上げ、設備製作を強化するのはもちろん、海外でのSEの育成、協力メーカーの発掘、海外におけるエンジニアリング体制の強化や、現地調達企業の発掘、パートナー企業との提携、海外の新商材輸入など様々な施策で海外事業を強化している。
ネットで新製品情報発信
FA流通業界でもネットでの情報提供に力を入れるところも増えている。空圧・油圧機器、ロボットシステム、制御・検出・計測機器、駆動・回転制御機器などあらゆるアイテムを集約した電子情報コンテンツの提供や、最新メカトロニクス情報をいち早く提供するネット版の新製品ニュースを発信している。新品から中古品までの各種FA機器、メカトロ部品などを販売するWEBショップを展開するところもある。
音楽文化水準の向上、地域貢献、社員の福利厚生のために、コンサート開催などの文化活動に力を入れているところも多い。顧客を招待したりすることで、営業活動にも結び付いている。
商社には、様々な分野のニーズやシーズ、求める技術・求められる技術を選択し、上手く組み合わせてシステム化の提案を行う能力が求められる。こうした顧客動向に注視しながら、産業の発展に寄与していかなければならない。