関東地区の流通は、昨年秋以降も比較的堅調に推移し、一部で心配されていた消費増税後の落ち込みの影響は避けられている。半導体関連、PV(太陽光発電)関連が牽引し、これに医療機器関連が加わりリーマンショックの売り上げを超える商社も増えて来ている。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック関連で、インフラ投資、ビルの省エネとリニューアル投資が進み、これに工場の設備更新などが加わり、今まで輸出が牽引してきたが、これに内需が加わり、車の両輪が稼働しはじめた状況になりつつある。
ただ、国内市場は過去のような大きな成長が見込めないだけに、流通商社にとってはさらなる工夫が求められている状況には変わりない。
家庭用PV需要が継続
PV需要はパワーコンディショナーや接続箱、避雷器、ブレーカーなどで新たな需要を創出した。一時に比べペースは落ちているものの依然として需要は旺盛で、今後家庭用などの需要が継続することで、先行きへの不安感は少ない。水素を燃料にした燃料電池車の実用化で、車載機器・部品に加え、充填施設など周辺インフラで防爆機器、センサー、コネクター、通信機器などの需要が期待されている。
地球温暖化やエネルギー問題なども絡み、省エネの取り組みが各方面で行われているが、ビル、工場、マンションなどのエネルギーを効率的に使う取り組みは新たな産業になりつつある。商社では、この関係を商材のひとつに加え、いままでの資材・購買、設計部門などへの訪問に加え、総務や保全などにも営業をかけつつある。この部分では女性社員を営業に配置して、女性の視点からの営業提案を行おうという動きもある。
情報通信のネット化進展
第4次産業革命とも言われるインダストリー4・0という言葉が浸透するなかで、情報通信のネットワーク化が各所で進んでいる。FA制御機器商社でこの関係に強い営業力を持つところは少ないが、今後の市場展開の中で付加価値販売に繋がるとして強化し始めている。電気工事や通信工事、建設工事など資格登録を行うところも増えつつある。
FA流通では、対面販売に加え、インターネット販売も増えつつある。ネット通販への評価はそれぞれの立場で分かれるが、ユーザーの利便性に対し商社がどう対抗できるかがカギとなる。商品の選定提案や、アッセンブリなど、ネット通販にはできない付加価値がひとつの対抗策となる。しかし、小口対応や調達ルートなどからネット通販と共存を図ろうとする動きもある。
共同物流の取り組みも
世界の秋葉原として知られている東京・秋葉原地区では10数社の商社と輸送業者が共同物流に向けたテスト的な取り組みを進めている。秋葉原地区では商社間の取引が多いことから、希望商社がそれぞれの配送商品を1カ所に持ち寄ることで、ピッキング作業や伝票枚数などを減らし、配送コスト削減や環境負荷の減少など図れるかを試験している。その成果はこれからであるが、在庫をうまく動かすことで、メーカー、商社を巻き込んだ新たな流通構造につながる可能性も期待されている。
為替の円安基調が続く中で海外からの輸入品販売は、ある意味逆風になっているが、日本にはない商品や特徴ある商品の市場開拓の余地はまだ大きい。同時にインダストリー4・0やオープンフィールドネットワークなど国際標準化対応の製品は、グローバル調達される機会が増える。海外製品だけをまとめたカタログを製作している商社もある。関東地区でも商社の経営承継は増えている。東京都電機卸商業協同組合(TEP)では青年部会を設け、経営や市場動向など研修を行える環境を作っている。同様に配線資材のメーカー、商社で組織化している日本配線資材工業会(JAWW)でも青年部会を設け、交流を進めている。市場の動向とも絡み、事業をどのように継承していくかは重要な問題になっている。