しかし日本のモノづくり現場ではIT全般、とりわけ3D CADの活用が遅れている。欧米のみならず、新興国においても設計情報の伝達ロスをなくすために、モノづくりデータの3D化は常識となっているが、日本では現場技術者のレベルが高いので、図面だけでも製品が作れてしまう。カスタムが多くロット数の少ない産業機器では、速くつくろうとするがために、むしろこの傾向は顕著であり、3Dデータ活用は補助図面の域を出ない。確かに「図面をおこす」という作業だけ切り取ると、2Dの方が2~3倍速いのだが、データを一度作ってしまえばそれを元に手配表や組立指示まで様々な派生情報を生成・共有できる3Dには総合点で劣る。日本の技術者個々の優秀性や、チームワーク力は認めるところだが、そこに依拠し続けていては、グローバル化した競争には勝てない。「日本のものづくりは日本のITでつくるべき」なのは、これら日本企業の特性を理解しないと、真のモノづくりITとして昇華しないと考えるからだ。2009年に資本提携したラティステクノロジーも、昨年末に資本提携した東洋ビジネスエンジニアリングも、日本のモノづくりを熟知したIT企業である。3社の知見や技術を総合することで、「設計とBOMの融合」に留まらず、その先の「日本固有の生産管理システム」まで包含したITを実現し、日本の製造業を活性化していきたい。
図研 「日の丸ITで製造業復活」 上野泰生常務取締役プリサイト事業部長
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