主に工場の自動機に使われ、目や感覚器として活用されるFAセンサは、ものづくりを支える制御機器として重要度を年々増している。日本電気制御機器工業会(NECA)の2013年度(13年4月~14年3月)の検出用スイッチ出荷額は1085億円で、14年度の出荷額も北米の堅調な景気や、スマートフォンに代表される情報家電の増産、半導体製造装置分野や自動車業界が好調に推移していることで、第3四半期までは前期比4・7%増で推移している。用途は製造現場の自動化にとどまらず、非FA分野にも裾野がひろがり、セル生産工程など、人手が多く介在する工程での活用や、物流分野、セキュリティ分野などでも活用の場が広がることが期待される。主用途のFA装置向けも、半導体・液晶製造装置、自動車製造関連向けが堅調に推移しており、需要が旺盛な工作機械などの各種加工機械関連、電子部品、食品・医薬品・化粧品の3品分野などを中心に堅調な市場拡大を見せている。
14年度の売り上げ推移は、上期が好調で、主に新興国向けのローエンドスマートフォンの量産などに向けた設備投資、メモリ用半導体製造装置への投資、自動車製造関連向け投資が活発で、13年度上期比で5・5%増の伸びを示している。第3四半期は伸びが鈍化してはいるものの、昨年比2・9%増と堅調で、通年でも確実にプラスで推移するものと見込まれている。特に安全関連センサにおいては、上期の輸出が好調で、昨年比31・1%増を示している。
FAセンサの大きな市場である半導体製造装置は、日本半導体製造装置協会が14年度の日本製装置の販売高を同14・7%増の1兆2936億円と予測している。15年度の予測も1兆3635億円と同5・4%の伸びと予測しており、搭載されるFAセンサも比例して需要が伸びると見られる。半導体装置は高い精度が要求されるため、FAセンサにおいてもファイバセンサなど、比較的付加価値が高いセンサが多く使用される。また、ウエハ用マッピングセンサ、真空対応センサなど特殊なセンサも数多く採用されるため、各センサメーカーにおいては重要な市場である。
FPD製造装置については、13年から14年にかけて中国でのスマートフォン向け新規ラインの立ち上げが多く、高精細・中小型パネル用の投資が旺盛であったため、反動で需要は落ち着くものと見られている。14年度販売高は2850億円と同18・2%減、15年度販売高は3300億円と同15・6%増と予測している。この数字はリーマンショックがあった09年度の2887億円と同等の数字であり今後も3000億円前後で推移すると見られている。
■ロボット市場も堅調に伸長
日本メーカーが強みを持ち、政府も注力しているロボット市場も堅調に伸長している。日本ロボット工業会が発表した14年1~12月の統計によると、受注台数は、同19・5%増で出荷額も同21・1%増の4851億円と、プラス成長となっており、FAセンサの採用数も増加していると想定される。ロボット自体に直接組み込まれるセンサの他に、ロボットの導入による省人化に伴い、ワーク有無確認といった単純な検出から、高さ、色などの判別用センサなども導入が確実に増えている。ロボット活用の高度化に伴い、画像センサのニーズも高まっている。FAセンサの安定した市場となっている食品・医薬品・化粧品の3品業界は、製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、需要が引き続き拡大している。国内景気の持ち直しから、内需も旺盛なため、設備投資も堅調に推移している。「安全」「安心」といったキーワードに即して検査装置の導入も活発で、昨今の異物混入問題から、トレーサビリティ用途での投資も堅調に推移すると思われる。
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられる。検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。長距離検出には透過型が最適である。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、その代わりにセンサの対向側に反射板を配置し、配線工数や設置工数を半減できる。特に反射型の性能向上、コストダウンが最近顕著で、従来苦手であったワークの色変化や傾きに強いタイプや、水や油などの環境に強いタイプなども存在感を増してきている。そのほか、超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、非FA分野で多く使われる、AC電源で使用でき取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインナップが多彩で、取り付けや用途にあわせて選定がしやすくニーズが高い。大手センサメーカーでは数百種もラインナップを揃えるなど、あらゆる用途に用いられる。アンプ部も数値管理できるタイプが主流になってきており、パワーや精度、コストといった基本性能もさることながら、制御機器との通信機能、他センサとの互換性など各社様々な機能で差別化を図っている。
■光電センサが大きな市場
半導体や液晶製造装置では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいことから光電センサの需要が多く、大きな市場を形成している。最近は、小型化と長距離検出、高い保護特性など進化し、検出距離50メートル、保護特性IP69Kなどの製品も伸長している。特に耐環境性が高い製品は、従来接触式センサが用いられてきた工作機械などの分野でも採用が進み、装置設計の自由度を高めることに貢献している。食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出の分野では、従来色判別用光電センサが主力であったが、画像センサのローコスト化により、求められる速度や、検出内容により使い分けられるケースが増えている。カメラ、照明、カラーモニタを一体化したローエンドセンサの導入も増加傾向である。同センサは、色面積や印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサや提案解決型センサなど専用センサの需要が高まっており、余分な機能を省くことでローコスト化が図られている。
光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式光電スイッチもある。最近では通信機能も備え、PLCと通信して、設定値を集中管理できるタイプも普及してきている。自動感度補正機能も各社搭載しており、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がない。また、光源に用いられているLEDの経年劣化による光量低下にも追従するタイプもある。
様々な対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測。従来は数百万円していたが、数十万円で導入できるようになってきており、複数センサを使用していた用途を1台のセンサでカバーするなど導入によるコストダウンも見込まれる。
近接センサは、耐環境性に優れている。高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない独自の特徴がある。直径が3ミリの超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数ミリから数10ミリが一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。
安全対策用センサも各種ある。マットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウェアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。
セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
接触式変位センサも機種が増えてきている。従来は数十万円していた高精度の製品が、汎用センサ並みの金額で購入できるようになり、接触式の弱点であった耐久性も向上。摺動回数1億回を表記した製品も発売されている。自動車部品などの金属部品の検査などに多く採用されている。
■災害防止へ重要な役割
レベルセンサは、液面や粉体面が設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的なタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用されている。最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、無線通信機能を持たせて遠隔地のデータを伝送できるタイプや、光ファイバを用いた通信を採用し、強いノイズ環境でも使用できる製品も現れている。さらに、自動車や二輪車などのエンジン周りや、外食産業の厨房にも採用されており、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減も図られている。
知能ロボット向けに開発された測域(レンジ)センサのアプリケーションが拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握するセンサで、知能ロボットに必要なセンサである。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活用の場が広がっている。
MEMS技術を応用したセンサは、フローセンサ、加速度センサ、非接触温度センサなどが挙げられる。フローセンサは、外乱による影響が少なくなり、高速応答を実現している。高感度のMEMS非接触温度センサは、広い空間でも人のセンシングが可能で照明環境に強く、静止している人もセンシングする。店舗や駅構内など、人の混雑状況をリアルタイムにセンシングすることで空調制御などのほか、防犯対策用としても需要が伸びている。加速度センサは、ロボット制御などでも活用されており、小型化、高精度化が年々進んでいる。MEMSセンサでは、モーターなどの音や振動エネルギーの異常振動を察知し、予知保全に応用できるMEMSセンサシステムもある。
FAセンサはこれまで、FA分野を中心とした工場での活用が多かったが、節電・省エネに絡む電力監視分野やモニタリング分野、EMS分野でもFAセンサの需要が着実に増加している。
最近では、ガソリンや液体窒素、酸素など各種タンクの残量監視や、水素エネルギーが普及し始めたのにあわせ、水素ステーションでの活用も見込まれている。農業分野でも公共下水ポンプ、集落排水ポンプ監視などの流水値や水位などのデータ収集、さらに環境分野では、井戸水や地下水を上下水道に転用する際の水質監視などの分野でも市場が拡大している。