一般消費者や法人の様々な需要に応じて供給をするために物づくりが始まる。物づくりは製品開発設計の段階を経て、工場へ回され、製品化される。一人の技術者が製品を開発し、図面を描いて、機械を使い、手づくりで製品を完成させることも昔はよくあった。複雑な社会になり、様々な需要が生まれて、一人の技術者が完成品までつくる物づくりはほとんどない。一人で設計から完成品までつくってしまうのは、試作品ぐらいなものである。製品の開発設計に限って言えば、一人の設計者で設計する製品はかなり多い。
部品や中間部分材は一製品一設計者が一般的である。複雑な製品は複数の設計者で一つの製品を設計する、電気で動く機械や機器製品では大きく分けると電気設計、機構設計に分かれているが、製品が複雑になれば電気設計も機構設計もさらに各パートに分かれて設計する。
したがって営業マンは、一人の設計者が一つの顧客であり、口座客の一つとして訪問面会しなければならない。つまり10人の設計者がいれば10社の顧客数となる。製品開発設計が終われば製造の担当になる。製造を担当するのは工場である。工場にもいろいろな業態がある。原料をつくる工場、原料を加工する工場、加工原料を製品化する工場、加工された部材を組み立て製品化する工場などである。いずれの業態の工場であっても、工場を運営するためにはいろいろな役割を持った技術者がいる。工場の規模が大きくても小さくても、工場を運営するためには一定の技術的役割がある。小さな規模では一人の技術者が複数の役割を持つ。または他の企業へ委託している。
たとえば工場内の電気の管理を電気保安協会に委託するなどのことである。大きな規模の工場になれば技術者の役割別にセクションが設けられる。製造工場の役割は、製造する物の品質・コスト・納期をどうつくり込むかである。昨今は、これに社会的責任ある工場としての工場品質のつくり込みが加わっている。
Q・C・DやCSRをつくり込むために技術者は役割を持つのであるが、時代の社会的需要によって、その役割はきめ細かく分化されてきている。したがって工場内の技術者の組織は複雑で多岐化している。物づくりが始まった頃の工場では機械課、動力課、電気課くらいの組織であったが、70年代後半になると生産技術という新しい組織ができて、Q・C・Dをつくり込む立役者的存在となった。その生産技術もひと頃のような勢いはなくなっている。
社会の需要の変化で物づくり工場の組織は変わってくる。組織の名前も変わってくるし、役割も多岐に分かれてくる。役割が大きくなる部門もあるが、衰退していく部門もある。
工場の組織は生きている。これから、どのような組織になっていくのかを注意深く見守る必要はあるが、現在の基本的な役割から見た技術者の組織は知っておかなければならない。
研究開発から設計を経て工場に回ってきた製品のQ・C・DやCSRをつくり込む組織として(1)生産技術(2)検査(3)品質(4)保全施設(5)情報システム(6)生産管理技術(7)社内ベンダー(8)CSR技術(9)電気設備(10)生産革新室などが一般化されている。
これら基本的な技術の組織は、その工場の新たな動きによって人の出入りが変わってくる。若い人材が入ってくるか、などを見れば何に力を入れようとしているかが分かる。営業マンは、いつも会っている技術者からすべての技術組織の出入り情報を取るのはむずかしい。こつこつと各部門の技術者に会うのが、顧客の具体的変化情報を取る近道である。
(次回は3月25日付掲載)