自動車業界を中心に普及が進んでいる産業用ロボットだが、アーム型や双腕型の「協働ロボット」によって新たな展開を迎えている。これらの協働ロボットは人と並んで作業できる安全機能を備え、従来のような「人ができない作業」だけでなく、「人と一緒に行う作業」までカバーしているのが特徴。電機・電子機器、食品、医薬品業界など、人による作業が数多く存在する分野で検討が始まり、産業用ロボットの市場拡大のチャンスを迎えている。市場が本格化する2015年は「協働ロボット元年」となる。
協働ロボットとは、作業者の労働安全に配慮した機能が盛り込まれ、人と一緒に作業しても安全だとリスクアセスメントで評価されたロボット。例えば、人や周辺の構造物に触れたら停止する機能や、衝突時の衝撃を和らげる安全カバーなどの安全機能を備えている。
これまで定格出力80Wを超える産業用ロボットを導入する場合は、「労働安全衛生規則150の4」によって、一律で安全柵や囲いを設けなければならないと規定されていたが、昨年12月に国際規格に合わせる形で変更が決定。「リスクアセスメントにより危険のおそれがなくなったと評価できるときは協働作業が可能」とされ、労働安全が適切に確保できていれば人とロボットの協働作業ができるようになった。
これまでも協働ロボットやシステムは存在したが、最近は多関節の協働ロボットの動きが活発化。メーカー各社から次々と製品が投入されている。
国内メーカーでは、昨春にファナックが”緑のロボット”「CR―35iA」を発表し、大きな注目を集めた。同製品は35キロの高可搬タイプで、全体が緑色のソフトカバーで覆われているのが特徴。このカバーによって衝撃を和らげ、挟み込みを防ぐ効果があるという。重量物の搬送や部品の組み付けなどの用途で作業効率に有効だとしている。
川田工業の「NEXTAGE」は双腕タイプの協働ロボット。画像認識システムを標準搭載し、人ひとり分のスペースで設置できるオールインワンタイプ。80Wの低出力モーターを採用し、規定変更以前から電子部品の組み立てラインなどで採用されている。
海外メーカーでは、ABBが13日、ドイツで開催されたハノーバー・メッセで、同社初の協働ロボット「YuMi」を発表。静電気対策が施されている双腕タイプで、スマートフォンやデジタル家電などの電子機器の組立工程を主要ターゲットとしている。
またデンマークに本社があるユニバーサルロボットは、小型軽量の6軸多関節タイプの協働ロボットを展開。海外ではフォルクスワーゲンやBMWといった世界的な自動車メーカで、すでに採用されている。日本でも自動車メーカをはじめ、電子機器や食品、医薬品などの業界から引き合いが入っているという。