今までのものづくりの概念を大きく変えるとして、世界中から注目を集めている「Industry(インダストリー)4.0」が中心テーマとなった「ハノーバー・メッセ2015」が、13~17日までの5日間、ドイツ・ハノーバーで開催され、約22万人が来場した。(藤井裕雄前特派員)
インダストリー4.0は、ものづくり現場の情報・通信・制御を融合化し、機械と製造過程、さらには出来上がった製品までが意思疎通を図れるようにすることで、大規模工場でも少ロット生産を可能にすることを目指している。この結果、低価格の大量生産品から顧客の求めるカスタマイズ化された製品へ転換することで、ものづくりのイメージは大きく一新することになる。
世界有数のものづくり大国であるドイツは、この構想をインダストリー4.0として産官学挙げて取り組みを強めている。米国もインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)といった構想で、ICT(情報通信技術)を背景にサービスを含めた新しい製造業の取り組みをグローバルに展開しようとしている。
ハノーバー・メッセでは、「ネットワーク構築を目指す産業連合」を目指し、出展企業各社の多くがインダストリー4.0に取り組む姿や製品をアピールした。機械間や工場間、企業間のネットワークを共通化して標準化することで、これらの壁を取り除こうとしており、つなげるためのネットワーク技術に、各種センサーやコントローラの技術を付加している。
ものづくりではドイツと並ぶ日本も、この流れに対応するための取り組みを強めている。
ハノーバー・メッセへの日本企業の出展は、ここ十数年は減少しており、今回も三菱電機、安川電機、東芝三菱電機産業、THK、キーエンス、ユニパルスなど10社前後と少ない。
ただ、インダストリー4.0という大きな流れを評価するためもあり、日本からの見学者が例年になく目立った。
インダストリー4.0の評価も「話題先行である」や「クラウドを活用した生産は余りにもリスクが大きすぎる」といった声も聞かれる一方、オープンイノベーションとして企業の枠を超えた連携に「日本のような企業間の競争が激しい国ではなかなか定着は難しいが、取り組まなければ、日本が負ける」といった厳しい見方もあった。
なお、ハノーバー・メッセでは毎年公式パートナーカントリーを決めているが、今年はインドのモディ首相が13日に会場を見学した。