【バンコク週報特約】タイ政府は、投資誘致優先業種のひとつに医療分野を掲げている。国民の健康意識が急速に高まり、高齢化が社会課題となっているタイで医療産業は成長が期待されるだけでなく、産業の高付加価値化の推進にもつながるためだ。
このほど、タイで医薬・医療事業を展開する日系企業のための活動プラットフォームが立ち上がることになった。
タイの医薬品市場は、年9%の成長を記録するなど堅調に推移。また、2015年末発足予定のASEAN経済共同体(AEC)を控え、タイ保健省がASEAN諸国に積極的な働きかけを行っていることから、国内市場の成長に加え、新たなビジネスチャンスが生まれることも期待されている。
ただ、タイでは調達・購入価格設定にさまざまな規制があるほか、昨年12月には医療費抑制政策の一環として薬事法改正が提案された。今後、医薬・医療分野は変革が急速に進むと見られており、企業が単独で情報を収集するのが難しい時代に入っていく。そのため、医薬・医療関連の日系企業の間ではオフィシャルな母体設置を求める声が強まっていた。
そこで、盤谷日本人商工会議所(JCC)化学品部会では2月5日、同会の下部組織として医薬・医療分科会の設立を承認。2月23日、活動が開始されることになった。その最初の公式イベントとして3月18日、「医薬・医療分科会キックオフミーティング」がバンコク都内のホテルで開催された。当初10社程度の参加を想定していたが、当日は118人が出席。医薬・医療分科会会長を務めるアステラス・ファーマ(タイランド)の松木崇社長は開会のあいさつで、「医薬・医療関連日系企業のコミュニケーションの場が求められていることを再確認できた」とスピーチした。
活動の概要は、(1)勉強会・講演会・視察などを通じた情報交換(2)タイ政府などへの要望事項の取りまとめ(3)会員企業のコラボによるビジネス機会の創出―などが予定されている。
キックオフミーティングには医薬品、医療機器のほか、現地製造、病院関係、商社、人材紹介、コンサルティングなど幅広い業種が出席するなど、分科会への関心の強さをうかがわせた。
医薬・医療分科会で副会長を務めるオリンパス(タイランド)医療機器部門の山田貴陽マネージャーは、「たとえば医薬品企業と医療機器企業が組むことで新たなビジネスチャンスが生まれる」と期待する。