不連続線線に異状なし 黒川想介(19)

世の中に流布している上澄みの情報をもって企画し、当たる時代もあれば当たらない時代もある。業界が成熟期に入ってくれば当たらなくなる。したがって現状の電気部品やコンポ機器の市場では、なかなか当たらなくなっている。当たる新商品が出なければ営業部門に比重を移し、短期予算の拡大と達成を試みる。

その結果、営業は大手顧客のカスタム商品を狙うか、顧客へのご提案営業と称してエンジニアリング力を強化したり、アプリケーション力を上げたりしてシステム受注や物件グロス受注を狙う。

電気部品やコンポ機器の営業のこの二十数年ぐらいを振り返って見れば、カスタム商品狙いやエンジニアリング力を身につける教育やアプリケーション力向上の推進をずっとしてきたのは、昨今のように、企画された新商品が当たらないからという理由ではなかった。

経済理論の中にトリクルダウンという理論がある。富める者が富めば、貧しい者にも自然と富が浸透をするという理論である。二十数年前に、これと同じような効果を狙った企画が始まった。企画グループは先進性のある大手企業を源流企業と位置づけ、彼らの要求するものを商品化して販売をすれば、川上の源流から川下に当たる一般企業へ拡販するという新商品創出を実行した。そのため、営業は大手顧客のアプリケーション情報に耳を傾け、大手顧客の技術に対応するためにエンジニアリング力を身につける営業スタイルができたのだ。

企画グループは、営業から上がってくる大手顧客情報と企画技術能力をもって新商品をつくるという商品創出モデルができた時代だった。当節、社会の状況は様変わりし多様化がどんどん進んでいる。顧客がつくる製品は多様化し、それに伴ってつくり方も多様化している。今後ますます多様化は進むだろう。そういう状況であるから大手企業の要求で創出した新商品は、そこが源流となって一般企業に流布することはなくなったということである。つまり源流企業という概念は消えたのである。

現在、新商品創出を担っている企画グループは、業界でよく耳にする情報や競合他社情報などの間接情報を重視して新商品を企画する傾向にあり、営業の情報は参考にする位置になっている。営業が商品づくりに参加するのは、大口顧客のカスタム品創出の時くらいのものである。その大口のカスタム品は一般企業に浸透するものではない。

営業は新商品が欲しいと渇望しながら、これまでつくりあげてきた商品をいかに多く売るかということのみに専念してきている。結果として新商品創出に関しては絡まず、企画は企画、営業は営業という独自の道を歩むようになった。時の経過とともに、各社は商品も構成もますます似かよって競合の度合は激しさを増している。

市場の成熟が始まった頃までは少しずつ利益のダウンを見込んで新商品を投入し利益を元に戻すことができたが、現在では目先を変えた程度の商品では利益を戻すことはむずかしい。そうなると製造の方にプレッシャーがかかる。しかし、コストの安い海外生産に頼ることのみを選択する時代ではなくなりつつある。企画も営業も製造も、直近でやってきたような流れから変えるべき時代である。成長すればするほど各セクションの壁は高くなる。

かつて創業、成長期には「製、販、開」という言葉があり、一体になった活動をしていた。そこからヒット商品が生まれ、利益を確保しつつ売り上げを伸ばしてきた。日本は今、再び成長に向けて舵を切った。それぞれの壁を低くして、市場の現場を共有する戦線を展開する時である。
(次回は4月22日付掲載)

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