フエニックス・コンタクト社は、同社が培ってきた「つなぐ」技術を駆使した取り組みを強める。主力製品である端子台の接続技術を電気制御や情報制御などに展開し、顧客のカスタマイズ化ニーズに迅速に対応しようとしている。ドイツはモノのインターネット(IoT)を具現化するとして注目を集めている「インダストリー4・0(I4・0)」構想を発信しているが、そのお膝元とも言えるフエニックス・コンタクトの動向を探った。(藤井裕雄前特派員)
■通信の新たな時代
1923年に路面電車のトロリー線端子の製造で創業した同社は、28年に開発した端子台が現在のベース商品となっている。モノとモノを接続する端子台は、いまIoTという新しい時代の中で役割を果たそうとしている。
工場の製造現場をインターネットに接続することで、通信は新たな時代に突入した。顧客の注文が入ってから工場の機械が動き出す。そしてIoT時代が本格化すると、販売された製品の情報が常に追跡される状況が出現することになる。
同社の端子台の接続技術はI4・0時代の通信を支えている。製品幅は端子台からオートメーション機器、インターフェイス機器、サージ機器などに広がっている。売上高も2014年12月期で17億7000万ユーロ(約2300億円)まで伸長し、従業員数も国内外で1万4000人となっている。
■すべてを自前で
同社の特徴のひとつはすべて自前で行うことである。膨大な数を使うねじは、銅線から自社で加工している。製品用金型も社内で製作し、生産機械もほとんどが自社製だ。グループ内に製品の公的な規格認証ができる会社も有しているだけに、製品試験も社内で行う。サージ保護機器の工場では高耐圧試験などを常時実施し、機能を確認している。
I4・0の具現化への取り組みも始まっている。少品種大量生産から多種少量生産への対応、さらにはカスタマイズの製品を短納期で納品する。この実現に向けて、モジュール化とデジタル化を進めている。製品開発と生産機械の開発を同時に進めるために情報を共有していく。デジタル化生産にはすでに取り組んでおり、電子機器の生産ラインでは、自動ハンダ―基板検査―基板カット―基板実装―取り扱い説明書印刷までを一貫したラインで実施。RFIDによるシリアルナンバー管理により、常に製品の生産状況がわかる。鉄道の複線のように2ライン(退避ライン)を設けることで、手作業部分との協調も図っている。
4月13日から独・ハノーバーで開かれたハノーバー・メッセの会場では10のハイライト製品を含む130の製品を展示した。また、I4・0の一例として独のリタール社、EPLAN社と共同ブースを設けて、制御盤の製造工程をモデルに、内蔵の端子台、スイッチング電源の製品選択とDINレール加工、検査を自動的に行うデモを実施した。RFIDを利用し人手を介さないことでミスが防げる。将来、ワイヤリング作業も自動化することを検討している。
同社は「環境・安全・品質」の三つでCS(顧客満足)を追求している。すべて自社で生産することでの品質管理に加え、環境のCS追求では、エネルギーの有効活用に向け、PV(太陽光)、風力に加え、地熱や射出成型時の排熱の利用、雨水のトイレ洗浄や防火用水への活用を行っている。
ドイツで大きな影響力を持つ自動車産業に対応して、「イーモビリティ」の新会社も設立し、電気自動車の充電関連をはじめ、車載機器へのアプローチも強めている。
■新たな課題解決
製品のバリエーションがますます拡大する一方で、製品のライフサイクルは短くなる傾向にある。I4・0はこうしたものづくりに求められている新たな課題解決につながることが期待されている。