ワイヤレス産業は2020年に80兆円市場へ成長! FAラボ代表松本重治 (上)

宇宙に電線は張り巡らされてはいない。宇宙創成といわれている”ビッグバン”以来「波動と粒子の二重性」を有している「物質/エネルギー」が生まれ、自然界の4つの力(重力、電磁気力、原子核の弱い力、原子核の強い力)によって無線で制御されていると言われている。これらの正体、活用、2020年には80兆円にもなると言われている巨大なビジネス市場動向を知りMOT(Management of Technolology:技術経営)の一助にして頂くのが本稿の目的である。

1.無線(wireless)とは?
(1)種類と伝搬媒体:
無線とは(電)線を用いないで情報や力を伝えることであり、水や誘電体経由も無線と言われているように、かなりいいかげんな表現である。学問的には「自然の4つの力=電磁気力、強い力、弱い力、重力」の伝達のことを無線と言っても過言ではない。ビジネス規模では、電磁波(電波)が圧倒的に大きく、電磁波(光)、電磁波(放射線)と続いている。

(2)自然の4つの力:
我々は物質間に働く重力をすごく大きいというイメージをもっているが、実際は途方もなく小さく、電磁力の10のマイナス38乗でしかない。

これは地上に置き、地球という大きな物質の重力を受けている釘を小さな磁石で持ち上げられることでも明らかである。電磁気力より強い力(約100倍)を「強い力」といい、核融合や太陽エネルギーである。電磁気力より弱い力(約1000分の1)を「弱い力」と言い、電子と中性子を結びつけている力などである。このような原子核内の力=核力の存在を予言したのが湯川博士である。

また同じ電磁波である電波と光は、電波には質量があり、縦波と横波で伝搬するが、光は質量がなく、横波がない。

(3)ナノ機械における光メカトロニクスと無線:
メカ、電気、ソフトウェアの三者協調した技術/製品をメカトロニクスといい、日本の近未来ビジネスである。このメカがナノマシンになった時には光とメカが相互に作用する。光で機械を高速制御するという従来では想像できなかった分野に年吉東大教授のプロジェクトがチャレンジしている、テーマ:MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の医療用光ファイバ内視鏡を試作した。量子工学、電磁気学、波動工学、幾何光学の協調であり、究極のメカトロニクスである。機構部がナノ単位の光メカトロニクスの治療ロボットが人体内部で活躍する時代が見えてきた。

2.電磁波(Electromagnetic wave)とは?

アインシュタインの特殊相対性理論は「物質とエネルギーは波動と粒子の二重性と光速(約30万km/s)不変の原理」とも言われている。

(素)粒子というとボールのようなイメージであるが、全く異なり、重さが(ほとんど)なく、大きさも(ほとんど)ない物質最少の単位とされている。

電磁波は電磁気力の波動の名称で、図3のように波長/周波数によって電波・光・放射線と分類されている。また電磁波は電磁誘導で交互に電界と磁界が生じて伝搬するのではなく、電荷の発生や電流の変化などによって発生した磁界と電界が時間変動で空間を伝搬する。また光で経験している、吸収・屈折・散乱・回折・干渉・反射は電波でも放射線でも同じである。

3.重力波(gravitation wave)とは?

「時空(重力場)に時間変動が光速で伝搬する」はアインシュタインの一般相対性理論で予言された。しかしまだ重力波は計測されていないし、重力波を検出する重力波望遠鏡を日、米、欧州で建設中である。

4.その他:PLC、ADSL、漏洩同軸ケーブル、エバネセント波

宇宙の情報、エネルギー伝送は、電線はなく全て無線である。どこにでもあるWi-Fi、プラチナバンドで2ドルの小電力の無線ネットワーク:ZigBee(ネットワーク)、お財布携帯/カードのフェリカ…と無線通信を追いかけてきたが、現実には有線通信技術のバックがあってこそである。

(1)PLC(Power

Line

Communication)

4~28MHzで数百Mbpsの伝送を行う。SS(スペクトル拡散)方式で、通信距離はMAX150mであるが、ドップラには弱く、柱上トランス共用棟での漏曳もありうる。

(2)ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)

ツイストペア線の電話線に数10MHz~数百MHzの搬送波に1.5MHz~8MHz帯域の情報を伝送する。アナログ伝送の約20倍、ISDNの約10倍の帯域である。伝送距離は6~7kmであるが多重化ができない。2008年3月に光通信に抜かれた。

一方、新規配線なしに構内、宅内に簡単に無線LANが構築できる。日本認可のPLC規格は、EPCA(団体)のHD-PLC規格である。

(3)漏洩同軸ケーブル
最近はトンネル内でも電車内でもTVが見れ、電話が使用できる。これは同軸ケーブルの適切なシールド部のカット(スロット/複数個所)によって、同軸内を伝送している電波を漏洩させているからである。これが漏洩同軸ケーブルである。(図4)

(4)エバネセント波
鉄骨で囲まれたビルの内部/別階の通信は困難である。1998年にUSのShadwick氏がエバネセント(漏れ出す)電波を発明。日本ではココモ・エスビ・コミュニケーションが特許権をもっている。

(電波)~媒体~金属/誘電体~(電磁場)~検出部(コイル、コンデンサー、アンテナ)での伝搬。

この漏れ電波を盗聴されない&遠くへ飛ばない(MAX1m)電波/電磁波に応用したLANシート(イトーキ)もある。

1.電波(electric

wave

radio

wave、air)産業

(1)電波の種類と用途

図5は現在利用されている電波の仕様と用途例である。使用電波によって伝搬、情報量、利用難易度が異なり、それが用途に反映されている。電波の伝搬には、アンテナ、同軸ケーブル、導波管、電波シールドなどが必要である。電波に情報を載せることを変調といい、AM(振幅変調)、FM(周波数変調)、SS(スペクトル拡散)などがある。さらに無線でネットワークを構築する無線LANは急激に増加している。

(2)AAAプロトコル機能付き無線の機能比較
図6は現在最も用いられている4つの無線:Wi-Fi、ZigBee、Bluetooth、NFCのAAA(Authentication/認証、Authorization/認可、Accounting/アカウンティング)プロトコル機能付きの機能と特徴である。

機能比較は筆者の私見である。また日本でのAAA格付け会社はアイ・エス・レーティングである。

(3)ITSスポットサービス(DSRC)
交通安全、渋滞対策、環境対策を目的とした、人車と道路を結ぶITS(Intelligent Transport Systems/高度道路交通システム)。従来、ETCに用いられてきたISOやITO(国際電気通信連)で国際標準化された高速で大容量の双方向通信を可能にする5.8GHz帯DSRC(Dedicated Short Range Communication/スポット通信)で、カーナビも含めてオールインワンにしたサービス。2011年より国土交通省管轄。

(4)電波産業市場と電波新産業創出戦略
2009年7月の電波新産業創出戦略についての電波政策懇談会報告書(総務省)では、新たな電波利用システムの実現により、2020年に50兆円規模の電波関連市場を創出し80.4兆円にするとしている。

さらに他の産業への波及経済効果として2015年に37.6兆円、2020年に68.9兆円が見込め、積極的な国際展開により輸出市場の伸びが2015年に6兆円、2020年に8兆円が見込める。この政策を実現させるために5つの「電波新産業創出プロジェクト」を立ち上げた。2015年までに5つの電波利用システムを実現し、2020年までに高度化・発展させる。5つのプロジェクトは、ワイヤレスブロードバンド1、家庭内ワイヤレス、ワイヤレスブロードバンド2、医療・少子高齢化対応、インテリジェント端末の5つである。

(5)電波(産業)関連のトピックス記事
★心電計内蔵のTシャツ開発
2014年1月30日:一般繊維の20分の1の細かい高分子繊維(700nm、東レ)と繊維導電化技術(NTT)でしなやかで肌に密着する生地「hitoe(ヒトエ)」を開発し、心拍や心電図センサーや無線端末を生地に埋め込んだTシャツを2014年中に販売すると発表。

★スマホで自動車遠隔操作
2013年10月17日、縦列駐車、車庫入れ、エアコン調整などをスマートフォンでコントロールする製品(ソフトウェア、ITSSスポットサービス)をパナソニックとGMで2016年中に製品化を発表。

★携帯電話/スマホの機能封印(圏外に)するケース発売
とうとう機能を一時封印することが必要に。導電繊維を電波遮蔽(減衰)に用いたケースで13年10月17日に上海問屋が1,229円で発売。

★TV画面とWeb画面を同時に表示するTV
最近のTVはTV放送受信・表示機能だけでなく、CDやスマホの画像表示など高機能化されているが、何故かインターネット受信・表示は避けてきた。TV放送提供各社が同時に表示されたWeb画面経由の広告商品が自社製品と思われるので頑固に反対し、放送事業関連団体がこのTV/Web・TVの広告を拒否しているという。この両画面TV(スマートテレビ)は2010年にGoogleTVが発売されたが赤字で、2011年に生産中止になった。2013年8月19日にはパナソニックが発表した。

(つづく)

松本重治(まつもと・しげはる)=FAラボ代表。
1941年8月24日生まれ。1966年3月電気通信大学卒。
1971年東京アプリケーションを設立し社長就任。81年アマダに入社し、研究部長、常務取締役を歴任。96年山洋電気執行役員コントロール事業部長、2003年光洋電子工業顧問。10年FAラボ設立。
モータ/モーション制御、およびコンピュータ技術に精通し、近接センサやUSBネットワークなどの特許35件を取得している。

オートメーション新聞は、1976年の発行開始以来、45年超にわたって製造業界で働く人々を応援してきたものづくり業界専門メディアです。工場や製造現場、生産設備におけるFAや自動化、ロボットや制御技術・製品のトピックスを中心に、IoTやスマートファクトリー、製造業DX等に関する情報を発信しています。新聞とPDF電子版は月3回の発行、WEBとTwitterは随時更新しています。

購読料は、法人企業向けは年間3万円(税抜)、個人向けは年間6000円(税抜)。個人プランの場合、月額500円で定期的に業界の情報を手に入れることができます。ぜひご検討ください。

オートメーション新聞/ものづくり.jp Twitterでは、最新ニュースのほか、展示会レポートや日々の取材こぼれ話などをお届けしています

特集の最新記事8件

>FA・自動化、デジタル化、製造業の今をお届けする ものづくり業界専門メディア「オートメーション新聞」

FA・自動化、デジタル化、製造業の今をお届けする ものづくり業界専門メディア「オートメーション新聞」

オートメーション新聞は、45年以上の歴史を持つ製造業・ものづくり業界の専門メディアです。製造業DXやデジタル化、FA・自動化、スマートファクトリーに向けた動きなど、製造業各社と市場の動きをお伝えします。年間購読は、個人向けプラン6600円、法人向けプラン3万3000円

CTR IMG