全産業の全業種に関係し、それへの対応が企業経営を左右しかねない「IoT(Internet of Things)」。各社は、何をどのように取り組んでいるのだろうか。計測器、制御機器メーカーで、グラフィカルでオープンな開発環境「LabVIEW」を提供する日本ナショナルインスツルメンツ(NI、東京都港区芝大門1―9―9、TEL03―5472―2970)の池田亮太代表取締役に話を聞いた。
-IoTをどう見ているか。
「いまインターネットに接続できるIoTデバイスは世界に90億台あり、2020年には500億台を超えると言われている。IoTはいま世界のトレンド、社会の原動力であり、当社も重点事業として力を入れている」
-どんな取り組みを行っているのか。
「オープンでグラフィカルな開発環境『LabVIEW』と、CompactRIOなどの計測器、制御機器を使えば、IoTで必要な計測・制御のシステムを素早く作ることができる。LabVIEWはもともと拡張性と柔軟性が高く、メーカーを問わずさまざまな機器を接続できる。LabVIEWとNI製ハードウェアという統合された開発プラットフォームを用いていろいろなシステムを構築でき、その可能性は無限大だ」
-具体的にはどんな使われ方をしているのか。
「IoTは、スマートフォンやウェアラブル端末、家電など一般消費者向けのコンシューマIoT(CIoT)と、工場やエネルギー、物流など産業向けのインダストリアルIoT(IIoT)に分かれる。
CIoTでは、デバイスの検査・テスト工程でNIの開発プラットフォームが活用されている。コンシューマ製品はライフサイクルが早く、テスト環境も頻繁に変わる。あるEMSはLabVIEWでテスト環境を構築したことで、製品の仕様変更にも柔軟に対応できるようになったと評価してくれている。
IIoTでは、スマート工場、スマートグリッド、インテリジェント化した交通インフラ、物流システムの高度化など、幅広い分野で当社の開発プラットフォームが採用されている。例えば航空機メーカーのエアバス社は、航空機のねじ締め40万点のトルク管理システムをLabVIEWで構築。ねじの前に作業員が立つと自動的に電動工具が最適なトルクに設定されるというスマートな製造現場をめざし試作を行っている。また英国の送電網の状態監視にもLabVIEWをベースとしたシステムが導入され、スマートグリッドの実現に一役買っている。LabVIEWは工場内の1工程から工場全体、電力網といった大規模なシステムまで構築できる。
当社はIIC(Industrial Internet Consortium)に参加し現在さまざまなIoTの実証実験を行っている」
-これからの取り組みは。
「IoTは進化の途中で、これからいろいろと形を変えていくだろう。LabVIEWを軸とする当社の開発プラットフォームの最大の強みは、シームレスで統合された開発環境で、柔軟に形を変えられること。試作や研究開発などテスト環境の構築に活用してもらい、IoTの発展に貢献していきたい」