次世代ものづくりには3Dデータの活用が必須。3DCAD、3Dプリンタに続く3Dツールとして注目されているのが、現物を3Dデータ化できる「3Dスキャナ」だ。ニコンの新製品「P3D NC―2323S」は、「価格が高い・大きい・操作が難しい」という従来のイメージを覆した画期的な新製品。デジカメのようにボタンを押すだけで3Dデータ化でき、今までにない簡単操作、小型でポータブル、オールインワンのため誰でも使える3Dスキャナとなっている。
P3Dは、『誰でも簡単に、どこでも持ち運んで使える』をコンセプトに開発されたポータブル3Dスキャナ。小型のノートパソコンと同程度の小さな筐体に、スキャナ機能と、表示・操作部となる7型タッチパネル、データ処理の演算部、バッテリ電源のすべてを収めたオールインワンタイプ(重量‥1.9キログラム)。
操作は簡単。デジカメのように本体を対象物に向けてボタンを押すだけで3Dデータ化が完了。誰でも簡単に使え、ポータブルで取り回しの良さが最大の特徴だ。
また3Dデータ化から結果表示だけではなく、基本的な3D計測まで本体のみで行え、完全PCレスで基本機能をすべて実行できる。詳細解析が必要な時にはPCにつなげて使うなど、柔軟に対応できる。
産業機器事業部開発部第一開発課主幹技師の青木洋氏は「これまで3Dのスキャニング及び計測は、専門技術を持ったオペレータが大がかりな装置で行うのが当たり前だった。P3Dでこれまでの概念を覆したい」と意気込んでいる。
3DCADによる設計が一般的になり、3Dデータ化の利便性は現場でも認識されている。しかし3Dスキャナの本格的活用はこれから。ではP3Dは実際にどのような用途に使われているのだろうか。
同事業部マーケティング部AE課中村哲也氏によると、設計データと製品の3Dデータを照合して工程の不良・製品の劣化具合の発見や、リバースエンジニアリングを通じて競合製品の調査に使うケースが多いという。ある自動車メーカーでは、ユーザーが車内で使うものや積み込むあらゆるものを3Dデータ化し、車内レイアウト設計時に活用しているという。
「設計データと実物のズレは必ず発生する。それをいち早く発見し対応することで、製品開発のスピードと品質を上げることができる。これまで3Dデータ化から解析まで長い時間がかかっていた。P3Dなら現場で3Dデータ化し、すぐに結果を見ることができる。ちょっと3Dデータを確かめたいという時に非常に便利だと評価いただいている」(中村氏)。
今後について青木氏は「3DCADが普及し、いまは現場も3Dデータを有効利用する時代。ノギスなど現場にいつも備えてある測定ツールと同じようにP3Dも使って欲しい」とし、中村氏は「P3Dは『ポータブルでオールインワンの3次元測定機』という今までなかったジャンル『O1』の製品。3D計測の裾野を広げる新しいチャレンジとして積極的に取り組んでいきたい」と話している。