ドイツ発のインダストリー4.0に対応した取り組みが日本でも各方面で進む中で、経済産業省は年内に「CPS(Cyber Physical System)推進協議会」を創設する。産業界を横断するモデル的なルールを整備(各種ソフトルール、プライバシーガイドラインなど)するもので、企業間データ連携・共有を促進するための標準契約モデルや、ISO/IEC/JTC1で検討が始まっているビッグデータ・IoTの国際標準化への対応、大企業とベンチャー企業とのマッチングなどを促進していく。
様々なデータがデジタル化する中で、実世界のあらゆるモノがネットワークでつながるIoT時代では、これまでは実現できなかったデジタルデータの収集、蓄積、解析、解析結果の実世界へのフィードバックが社会規模で可能となり、実世界とサイバー空間との相互連携としてCPSが生まれ、新たな情報革命とも言うべき社会変革が始まっている。
経産省では、こうした流れに対応し、CPSに向けた官民共通基盤の整備に取り組むことにした。
ここでの具体的な技術課題として、「人工知能(AI)」では、脳型人工知能・データ駆動・知識推論融合型人工知能・非ノイマン型コンピューティング(量子アニーリング、脳型コンピュータ等)など、「情報処理」では、エッジコンピューティング(分散処理、データセントリックコンピューティング)・リアルタイム制御技術・画像認識・処理技術・高度セキュリティ技術(情報セキュリティ、次世代暗号技術、制御セキュリティ)など、「デバイス」では、無給電/低消費電力/高性能センサシステム・次世代パワー半導体(新材料)・新材料/新構造による低消費電力/高性能半導体(大容量高速メモリデバイス・ストレージシステム、光エレクトロニクスデバイス等)・低コスト/多品種少量/歩止まり向上のための生産・設計技術などが考えられている。
また、CPSの進展が顕著に進むと社会全体に大きな変革をもたらす分野として、7分野(製造プロセス、モビリティ、流通、スマートハウス、医療・健康、インフラ・産業保安、行政)を、また今後CPSにより大きく変化していくと考えられる分野として、教育分野、農林水産業、運輸業、金融業、広告業、観光業などのサービス業など様々な分野が考えられている。
このうち、製造プロセスでは、工場内の工程横断的なデータ共有により、製品のライフサイクル(設計~生産~販売)が効率化・柔軟化し、複雑・多様な製品の迅速な市場投入が実現できる。また、企業の枠を超えたデータ共有により、サプライチェーンの最適化が実現し、多品種少量生産を低価格・短納期で達成することが可能になる。
そのための今後の取り組みとして、これまでFAで構築されてきた工場内制御系ネットワークを基幹系ネットワーク(インターネット)につなぐとともに、企業間の競争領域・協調領域の切り分けによる相互連携・データ相互利用を実現し、マーケティング、商品開発から在庫管理まで、それぞれのセクターの無駄を省き、サプライチェーン全体の最適化を目指すことを求めている。
具体的には、(1)工場内に蓄積されたアナログデータのデジタル化を加速化する(2)工場内の機器やシステムをつないで一括制御するためのデータ形式の標準化やミドルウェアの活用の推進、SI(システムインテグレーター)の確保(3)データ収集プラットフォーム及びその活用のための解析アルゴリズム・解析ツールの構築やデータ分析人材の確保(4)デジタルマニュファクチュアリングに関する国際標準化の動きへの対応―などを挙げている。