人の上半身を模した双腕ロボット。人と同じ動きができ、大きな期待を寄せられているロボットの一種だ。なかでもABB(東京都渋谷区桜丘26―1、TEL03-5784-6000、トニー・ザイトゥーン社長)の「YuMi」は、安全柵がいらず、人と並んで作業できる協働対応で、世界的にも注目を集めている。
同社オートメーション・モーション事業部ロボティクス本部村松優本部長に近況を聞いた。
-産業用ロボット市場の現状は
「例年になく良い反応だ。原油安や好調な収益を背景に、企業にも投資機運がある。また、産業用ロボットの安全基準が変わり、人とロボットが協働で作業できるようになったことが大きい。これがロボット導入に対する企業の意識に変化をもたらしたようだ。以前の判断基準は、導入前後の費用対効果ばかりだったが、今年は違う。人材不足や採用が難しくなり、今いる人材の活用を目的としてロボットを検討する企業が増えている。これまで自動車産業がほとんどだったが、軽工業や計作業にも広がり始めている」
-新製品YuMiについて
「4月13日、ドイツのハノーバーメッセの会場で双腕の協働ロボット『YuMi』を発表した。他にも数社が双腕ロボットを出しているが、YuMiはまったくコンセプトが違う。YuMiは、コンシューマエレクトロニクス分野のアセンブリ工程にターゲットを絞り、その作業向けに最適化されている。扱うのは小さな電子部品なので、腕の可搬重量は500グラムと軽量に設定。本体はすべて静電気対策が施され、半導体パッケージに触れても大丈夫な仕様になっている。
「3Cと言われるコンピュータ、家電、通信機器はセル生産で作られることが多い。セル生産は人が重要で、協働ロボットと一緒になることでより生産性を改善できる。かつて海外に移転した3C製品の工場も、最近は国内回帰が進んでいる。日本のように失業率が低く、労働市場が成熟した国にものづくりが回帰した時、課題となるのが生産性だ。YuMiはセル生産に最適で、日本人の器用さとコラボして生産性を向上し、メイドインジャパンのものづくりに貢献する。これからのモデルケースになるはずだ」
-デザインもユニークだ
「アセンブリ工程で一緒に働く人に配慮し、全体的に丸みを帯び、親近感が湧くように心がけた。工業用デザインの世界で権威のある『レッド・ドットデザイン賞』も受賞した自慢のデザインだ」
-今後について
今年はまさに協働ロボット元年。双腕ロボットの市場も大きく盛り上がると期待している。当社はこれまでは自動車関連事業への納入実績が比較的多く、3C分野はこれから。YuMiはそれを切り拓く良いツールになってくれると思う。また世界に比べて日本国内でのロボットシェアは低く、知名度もまだまだである。ロボットと言えばABBというプレゼンスを出していきたい」