製造現場におけるIT投資の必要性が高まっている。
従来は受注、在庫などに関連する「今の状態を”見える化”する目的」での会計ソフト、基幹システムなどに対してのIT投資が主軸であったが、「未来を予測する目的」での各種シミュレータが普及しはじめ、実際に投資効果が表れはじめた企業が増えている。
そして特に「少量多品種」「リードタイム短縮」などのユーザーニーズの高まりや、需給の変動へ即応することを目的とした「生産スケジューラ」分野が注目を集めている。日本発の生産スケジューラベンダーである「アスプローバ」高橋邦芳代表取締役社長に話を聞いた。
高橋社長によると、生産スケジューラを導入するメリットとして、需要予測、見込みや受注情報から、最適な生産計画を立てられるということがあげられ、もし突然のキャンセル、追加オーダーが発生した場合でも、限られたリソースで生産が間に合うかどうかを迅速かつ正確に回答できるようになるという。
製造現場では多品種小ロット生産はもちろん、短納期での納品も顧客から求められている。しかも、原材料の在庫、生産現場の人員、設備の稼働状況など複数の条件を加味して納期回答をしなくてはならない。
従来はエクセルでの計算や長年の勘でどうにかなっていた企業でも、パラメータが複雑化し、「生産計画立案」に多くの工数が割かれてしまっている。実は、その問題の多くは、生産スケジューラを含めたITの力で解決することができる。
実際に大手自動車部品メーカー、電子部品メーカー、工作機械メーカーなど多くの企業で導入され、工数削減はもちろん、在庫の最適化、リードタイム短縮など多くの効果が出ているという。実際に世界2000本以上の導入実績があり、生産スケジューラにおける同社の日本国内シェアは6割に迫る勢いだ。
同社は、人工知能のプログラマとして活躍していた高橋社長が1994年に創業。
当時の人工知能は金融業向けなどで注目を集めていたが、「工場のスケジューリングについて開発する方が、ビジネスとしての確度が高い」と判断し、現在に至っている。また、時代の変化に適応できるように、他社基幹システムや、生産管理パッケージともデータ連携を可能にしており、既存のソフトウェア資産もそのまま活用ができる。
高橋社長は「まだまだ国内製造業の海外競争力強化の余地はある。そのためには、設備・人はもちろん、IT分野への投資に対しても各企業トップの決断が必要だ」と述べ、各企業の投資に期待を寄せた。