インダストリー4.0、インダストリアルインターネットなど”つながるものづくり”が世界的に志向されるなか、日本でもメーカー、団体、大学・研究機関が集まり、IoT技術を活用した製造業の新たな形を目指す団体「IVI(=インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ、西岡靖之理事長)」が18日発足した。オムロン、安川電機、東芝、パナソニック、富士通、ヤマザキマザック、IHI、日産自動車など52社が参加し、企業の壁を越えた「ゆるやかな標準」による新たな製造業の仕組みづくりを進めていく。
同団体は「ゆるやかな標準」をコンセプトに、製造業各社が強みや独自性を自社に隠し持ったまま連携できる仕組みを作り、それを利用することで各社の競争力強化を目指す。ゆるやかな標準とは、最低限の共通化すべき部分だけ規定し、部分的な改良を許容する仕組みのこと。人が中心となる生産現場の仕組みを想定している。
具体的には、企業の持つ技術や製品、知的財産を「競争領域」、生産管理や品質管理など共有できる分野を「協調領域」として区別し、特に協調領域に関して各社が同じプラットフォームで活動して効率化できるようにルールやデータ項目などをワーキンググループで議論して決定する。
それを具体的なリファレンス(参照)モデルに落とし込んでデータベース化。その一部をオープン化し、国内外の製造業各社や関連企業への利用を推進していく。その結果として、企業間の連携が加速し、新しいバリューチェーンが形成されていくという。
これまで製造業は、工場内部の仕組みをすべてクローズしていた。IoT時代を迎え、工場内部の機器が外部とつながるようになるなかで、現状のままでは孤立する可能性があった。さらに、単純なオープン化では技術流出によって競争力が低下する恐れがある。その両方の課題を解決する手法としてゆるやかな標準と連携を提唱している。
18日には、東京都港区の機械振興会館でIVI設立総会が行われ、定款と規則、役員すべて承認され正式な任意団体として発足した。理事長には発起人の西岡靖之法政大学教授が就任し、理事として熊谷博之氏(富士通)、今野浩好氏(今野製作所)、堀水修氏(日立製作所)、光行恵司氏(デンソー)、宮沢和男氏(製造科学技術センター)、森田温氏(三菱電機)、渡辺真也氏(IHI)、監事に羽田雅一氏(東洋ビジネスエンジニアリング)、日比野浩典氏(東京理科大学教授)が名を連ねた。
西岡理事長は「IVIの特徴は現場寄りであること。ものづくりをする人々を中心に、日々の業務からIT化して対応していく」と話した。
また同団体は、ものづくり現場を持つ「正会員」、ものづくりとITの融合を支援する企業による「サポート会員」、学識経験者の「学術会員」、賛同した団体や個人の「賛助会員」で構成される。資本金または従業員数で大企業と中小企業を分けて会費を別にし、中小企業でも入れる仕組みとなっている。
今後、毎月のワーキンググループをはじめ、成果発表会や講習会、研究会、セミナー・講演会、工場見学、公開シンポジウムなど、さまざまな活動を行っていく。またプロジェクト単位で実証実験や個別の技術開発も行う計画だ。