非接触式センサの代表的な存在である光電・近接センサは、FA分野を中心に、社会インフラ関連、民生分野まで幅広い市場を形成している。国内外の旺盛な設備投資増を背景に着実に市場を広げており、特に海外向けは自動車や電子機器の新しい生産投資が継続しており、過去最高ペースで推移している。機能的にかなり高レベルに達しているものの、使用用途によって要求される機能も多く、新しいアプリケーション開発に繋がっている。
■着実に市場拡大
光電・近接センサ市場は、半導体・液晶製造装置、自動車製造関連、食品・医薬・化粧品製造分野などのFA用途から、非FA用途まで幅広い市場を形成している。
日本電気制御機器工業会(NECA)による検出用スイッチの2014年度(14年4月~15年3月)の出荷額は、前年度比104.6%の1134億円となっている。価格の低下や海外生産の増加などもあり、さほど大きな伸びとはなっていないが、グローバルで見ると着実に増加している。NECAでは15年度の出荷額を前年度比105%の1195億円を予測している。
NECAの検出用スイッチの出荷統計のうち、光電・近接センサは3分の1強の約450億円と大きな割合を占めており、伸び率も2桁増と全体の伸びより高くなっている。
光電・近接センサの大きな用途となっている半導体・液晶製造装置分野は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、半導体製造装置は14年度が14.7%増の1兆2936億円と2桁の伸長を見せ、15年度も5.4%増の1兆3635億円を予測している。液晶などのFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置も、14年度は18.2%減の2850億円と落ち込んだが、15年度は15.8%増の3300億円と2桁伸長を予測。
■工作機械・ロボット堅調
工作機械の出荷も堅調で14年度は過去2番目の出荷を記録したが、今年度に入っても前年同月を上回る状況が続いており、15年度は過去最高を更新し、1兆6000億円突破の期待が高まっている。また、ロボットの出荷も堅調に増加しており、今年度は過去最高となる7000億円突破を見込んでいる。ロボットは海外では人件費上昇、国内では人手不足と安定した品質確保などの点から導入が急速に増えており、加えて非製造業でのロボット活用気運が高まっていることもあり、さらに増加しそうだ。
自動車の生産投資も追い風になっている。海外では新設工場の投資が継続し、国内でも生産ラインの更新需要が出始めていることで、市場に活気を与えている。さらに、需要が安定していると言われる食品・医薬品・化粧品のいわゆる3品業界でも継続した投資となっている。他の分野とは異なる機能が要求される部分もあり、光電・近接センサメーカーにとっては、新製品や新しいアプリケーション開発につながるとして、重視しているところが多い。
非FA分野とも言える、工場の外でも光電・近接センサの用途が広がっている。安全・防護に対応して、駅のホームでの転落防止用扉や、道路のトンネル前での車両の高さ検知、駐車場での侵入検知用途など、屋外や交通分野などでアプリケーションが拡大している。
光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適。このほか超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
FA分野では、隙間などにも取り付けられ、光ファイバー部を交換するだけで様々な用途に対応できる光ファイバー式のアンプ分離型の需要が多いが、最近はアンプ内蔵でも小型化が著しく、極端な狭隘の用途を除き採用が増加傾向にある。
半導体や液晶製造装置分野では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から、光電センサの使用が多い。
小型化と長距離検出、高い保護特性などが進展しており、検出距離50メートル、保護構造IP67やIP69Kなどの特性を持つ製品は、粉塵や水のかかることが多い食品機械向けでの使用が多い。
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、より精度の高い検出を実現した製品の開発が進んでおり、カメラ、照明、カラーモニターを一体化したセンサも好評を得ている。
3品業界では、例えばペットボトルや瓶の混在検出、透明容器の検出、液など中身の有無による検出などといった業種独自のセンシングニーズがあり、これに光電センサが安定して検出する調整の難しさがある。このようにユーザーのニーズに各センサメーカーは独自のオートチューニング機能で調整を容易にしたり、用途を限定した専用センサ開発などで対応している。
新機能の光電センサでは、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式、デュアル感度補正機能で、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないといった製品も販売されている。
さらに、あらゆる対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測する。
光電センサを内蔵したエンコーダでは、移動速度750メートル/分まで対応でき、直線だけでなく曲げ半径0・5メートルの曲線部にも設置可能なエンコーダもある。このタイプは、非接触での設置を簡単にするために、各種の通信ネットワークに接続できる。
近接センサは、耐環境性が良く、高温・多湿、防爆雰囲気、水中などで使用できるといった特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に、光電センサとは異なった市場・用途を形成している。
オールメタルタイプも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。
検出距離は、数ミリから数10ミリが一般的だが、300ミリぐらいまで対応できるタイプや、リニア近接タイプでは検出距離を0、50、100ミリと調節することができるなど、多様な種類がある。
光電・近接センサは、日本メーカーとドイツメーカーが品ぞろえを充実して、強い競争力を有している。工作機械、半導体・液晶製造装置といった日本製品のシェアが高い分野では日本メーカーが強い競争力を発揮しているが、自動車関連やロボットなどは海外メーカーのシェアが比較的高い傾向にある。市場のグローバル化が加速しているだけに、海外市場での販売力が大きなポイントとなってくることが予想される。