業界・企業規模を問わず、産業用ロボット導入に向けた熱気が高まっている。食品・飲料業界や医薬品、化粧品業界など、さまざまな業界で導入が進み、中小企業でも採用を検討する企業が増加傾向にある。「ロボット新戦略」など国を挙げた支援、普及に向けた環境づくりが進む今、強く大きな追い風が吹いている。
現在、日本が国内で保有している産業用ロボットは約33万台。その中心となるのが自動車と電子・電機業界だ。日本ロボット工業会によると、2014年の産業用ロボットの国内出荷台数2万8609台のうち、35.1%が自動車業界、27.3%が電子・電機業界となり、これら二つの業界で6割以上を占めている。
企業規模別では、導入のほとんどが大企業で、中小企業まで広がっていないのが実情。自動車と電子・電機業界以外への横展開と、中小企業への裾野拡大が産業用ロボットの課題と言われている。
こうした状況に対し、経済産業省は、15年度から企業のロボット導入に対する補助金の交付を開始。中小企業にはロボットの設備導入とライン構築にかかる費用の3分の2を、大企業の場合は2分の1を補助する制度となっている。
5月8日までにロボット導入実証補助事業で140件、FS(フィジビリティスタディ)事業で5件の応募があり、このうち両事業合わせて85件に対して補助金の交付が決まった。
採択企業の顔ぶれを見ると、特に中小企業が目立つ。採択された85件のうち64件が中小企業で、全体の75%を占めた。中小企業と言っても、資本金1億円以上、従業員数が数百人という中堅企業から、資本金1000万円、従業員数10人未満という小さな企業まで、さまざま。
例えば、伝動機器メーカーの三木プーリ(川崎市)は従業員数800人、売上高135億円の中堅企業。粉末冶金における圧粉体のバリ取り作業へのロボット導入を計画している。
逆に最も事業規模の小さな例では、京都市のFESは資本金300万円、従業員数7人。3Dデータから発泡スチロールの造形物を製作するのに、産業用ロボットの導入を予定している。
また業界別でも、飲食料品や医薬品、衣料など業界の幅が広がっている。特に目立ったのが食品関係で、採択企業80件中10件を占めた。
例えば、湧別漁業協同組合(北海道)は、ホタテ貝の剥き作業にロボット導入を検討。エコグリーン埼玉(埼玉県)は製パン生地の成型投入ラインの省人化・自動化にロボットを使い、長崎ちゃんぽんの店舗を全国展開しているリンガーハット(東京都)も、生餃子のピッキング作業の自動化システムの開発を予定している。
さらに、今後の普及のカギを握る協働ロボットに関しても、「双腕ロボットによるナット整列・挿入装置の開発」(エヌアイシ・オートテック、富山県)や、「人と工作機械の生産性を最大化する協働ロボットの導入事業」(三和ロボティクス、長野県)などが採択された。人が装着するパワーアシストロボットも「マッスルスーツの住宅用パネル製造工程への導入実証」(勝田産業、埼玉県)、「ロボットスーツ導入による重作業負担軽減事業」(丸市食品、福井県)などが採択され、多様な分野・用途で、さまざまな形の産業用ロボットが急速に普及し始めている。