イギリスの総合誌「モノクル」のランキングで、東京が「世界で一番住み良い都市」に輝いた。2位はウィーンで、3位がベルリン。数十年前の日本は、高度成長の傍ら環境破壊が進行し、排ガスによる大気汚染と河川の汚染などが酷かった。集合団地などの狭い住居が「うさぎ小屋」と酷評され、住環境は世界一悪いのではないか?と思われた時代もあった。今回のランキングは、犯罪や医療、ビジネス環境、文化活動や食事などソフト面を重視したものだが、昔の東京を知る者としては素直に嬉しい気持ちだ。
確かに、世界を渡り歩き、東京に戻ると「世界一便利で素敵な都市だな」と心底思う。アメリカの大きな家や車社会の豊かな生活はとても素晴らしいが、東京の魅力は別物だ。ストで交通機関がストップすることもなく、電車はスイカ1枚で乗り継ぎできる。食事の悩みは「今日は何を食べようか?」という贅沢な選択の悩みだけ。日本人が江戸時代から積み上げた文化の蓄積を感じる。
一方、日本のモノづくりはどうだろうか?
高品質を誇る日本の家電を購入しても、段ボールと発泡スチロールを分別する手間や、紙で発行される保証書を保管する手間を強要される。ハードは確かにすばらしい。でも、ソフト面での思いやりが欠けているのではないか?
メーカに顧客視点のサービス精神を感じられないのがとても残念だ。
高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。
2014年3月まで株式会社アマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。