部品やコンポ商品営業では、横展開をするというフレーズをよく使う。メーカーが部品やコンポ商品をつくる時にどういった個所に使用してもらうのかを意図してつくるのであるが、つくった時の意図とは違う使い方や、違う個所に使われていることが往々にしてある。思いもよらない使われ方や使用個所を発見した時には、営業マンは嬉しくなってしまう。同じような現場をもっている顧客にその情報を提供して、うまくいけば当該商品を受注できるからである。このように思いがけず発見した情報の活用によって受注に結びつける営業活動を横展開営業という。
昨今では、部品やコンポ商品の使用個所や使われ方のことをアプリケーションと呼んでいる。また商品そのものの知識と同様に商品のアプリケーション知識を学び、その有用性を売り込む営業を、昨今ではアプリケーション営業と言っている。
メーカーが発売する部品やコンポ商品はどこに売れるとか、どこの個所に使われるという案内が商品カタログ上や説明会の折りに知らされる。それを頼りにして営業マンは活動する。したがって商品仕様のカタログやサンプルを持って顧客の間を走り回るよりは狙いが定まるので、効率的訪問ができる。そのために、アプリケーションツールは見込み客開拓のツールとしては欠かせない。現在の部品やコンポ営業の月間売上げの大半は、顧客からのリピート受注によるものである。ほぼ商品形式で注文が入ってくる。
次に多い売上げは、顧客が部品やコンポ商品を使用する際に商品の細部についての問い合わせである。これを案件という形で商談テーマ化し、管理した上で受注する売上げである。次に多いのは商品紹介を兼ねた売り込みによるものだ。その次に、やっとアプリケーションツールによる見込客開拓売上げが顔を出すようである。部品やコンポ商品の草創期には、どこに売っていいか分からずに商品カタログの紹介売り込みが大半であり、リピート受注は夢であった。時代を経るにつれ顧客側で色々な使い方をし、使用個所も増えてきた。したがってリピート品は増え、顧客側で案件を増やしてくれるようになった。今や売上げの大半はリピート受注と顧客による案件発注の二つになっている。それだけ業界は成熟しているのである。
それ以上の売上げを上げるには見込み客の開拓が重要であるから、アプリケーション集の活用を促し見込み客開拓に力を入れているが、あまり効果はない。成熟した内容のアプリケーション例を提示しても、見込み客は刺激されない。すでに知っているアプリケーション例ばかりだからである。そもそも、昨今言われているアプリケーション紹介営業と横展開を図る営業とは、本質的に違うものである。昨今のアプリケーション営業は、既に使っている個所のある顧客や使い方をしている顧客に狙いを定めて、売り込みをかけていくものである。
一方の横展開を図る営業は思いもよらない新たな使われ方や新たな使用個所の発見にわくわくし、他の顧客にも売れそうだという思いが営業マンを積極的行動に駆り立てるものである。成長期は同じような製品や設備が拡大する時代であり、同じアプリをどんどん広めていく営業が主流であった。一方、成熟社会を実現している昨今では、多様性の時代であるから多種の製品やそれに合った設備が広がっていることになる。したがって新たなアプリ発見にわくわく感をもって、本来の横展開を図る営業をする時なのである。