「次代の製造業はどんな形になるのか?」「そのイニシアチブは、どこの誰が握るのか?」
各国・各企業の取り組みに注目が集まっている。そもそも何を目的としてインダストリー4・0やインダストリアルインターネットははじまったのか。各国の状況をまとめた。
自国の産業を振興し、国を豊かにするのは政府の最も重要な仕事だ。強い産業はその国の経済を支え、国民生活の安定に大きな役割を果たす。特に製造業は裾野が広く、就労人口も多い。グローバル市場で製造業が高い競争力を持ち続けることは、豊かな先進国であり続けるための必須条件だ。
いま第4次産業革命と言われ、製造業のものづくり手法とビジネスモデルのイノベーションが起きている。そのカギとなるのがIoT技術で、IoTを活用してあらゆるモノからデータを収集・分析して最適解を導き出し、それをフィードバックして、次の行動につなげていく。
各国はこの仕組みにおいて主導的な立場に立つことで、自国に有利なビジネス環境を作り出そうとしている。そのなかで先行しているのが、ドイツの「インダストリー4.0」とアメリカの「インダストリアルインターネット」だ。
■産官学が一丸 先行するドイツのインダストリー4.0
インダストリー4.0は、2013年4月にドイツの戦略的国策としてスタート。スマート工場を標準化してドイツ製品の付加価値を高め、さらにその機能を装置に実装して製品として輸出することを目的としている。特に中小企業の輸出支援に向け、産官学が一丸となって取り組んでいる。シーメンスやSAPといった世界的企業をはじめ、国内の有力企業の多くが参画している。
■GEを中心とするアメリカのインダストリアルインターネット。IICで要素技術標準化
アメリカではGEを中心として「インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)」を結成。産業インターネットの要素技術の標準化を図っている。GEやシスコシステムズ、IBM、インテルなどが主要メンバーとなり、アメリカ主導のIoTの仕組み、製造業だけでなく、社会インフラの構築や運用までを視野に入れる。
■フランスや中国も
またフランスでも今年5月、政府が「l’Industrie du Futur(産業の未来)」が国家プロジェクトとして始まった。
一方、世界の工場として存在感を発揮してきた中国も、IoTを使った新たな製造業の仕組みづくりに参入。それが「中国製造2025」だ。2025年までに中国製造業をグレードアップするもので、中国版インダストリー4.0と言われる。近年は人件費高騰やチャイナプラスワンの流れのなかで立場が不安定になりつつあり、欧米各国を追う形でIoTによる製造業の仕組みづくりに取り組み始めている。