アスクルといえば、同社のロゴ「アスクル坊や」がエンピツを持っているのに代表されるように「事務用品」のイメージが強い。
しかし、12年からMRO(Maintenance、Repair and Operation=設備維持・保全・稼働に必要な消耗用品)事業にも注力、「中小企業にも大企業並みのサービス」を提供するために、現在では73万アイテムを超える製造業向け商品を扱っている。軍手、ガムテープ、マスク、潤滑油などホームセンターなどで購入できる消耗品はもちろん、精密ノギスやインダクションモーターまでラインアップは幅広い。
同社が圧倒的な強みとするのは物流網。全国7カ所の物流拠点を活用し、配送場所によっては「明日」ではなく、「当日」商品が届く。これは製造工程やメンテナンス工程で使用する消耗品が一つ欠けても安定生産ができなくなってしまう製造現場では圧倒的なメリットになり、ネットで即座に購入でき、最短当日で届くため、購買活動に関する工数削減にもつながる。
一方、専門商社にとって旧来の商流とは異なる「ネットによる販売(Eコマース)」は、自社の売上げ・利益を奪われかねない。ところが同社は「エージェント制度」と呼ぶ独自のビジネスモデルを構築。カタログ発送、受注、配送、問い合わせ対応などは同社が行い、新規顧客開拓、債権管理、代金回収は全国約1400社のエージェントが行う。流通にとって必要不可欠な機能をエージェントと分担することで、流通システムの簡素化を実現した。
さらに、同社はヤフーの協力のもと展開する個人向けECサービス「LOHACO」で「LOHACO ECマーケティングラボ」を立ち上げている。
同ラボは活動2期目に入り、メーカー51社とパートナーシップを組み、個人情報を含まないビッグデータを科学的・論理的手法で解析しているが、MRO事業でも注文データの分析やコールセンターでの問い合わせ情報などをもとに新しいマーケットを創造していくとしている。既存企業と「共存共栄」を目指す同社の製造業での活躍が注目される。