ロボット実用化の最後の関門となるのが、フィールドでの実証実験。各種の規制によってテストできる場所と時間の確保が難しい上、申請など事前準備も面倒。神奈川県の「さがみロボット産業特区」は、ロボット普及のために規制緩和を実施し、さまざまな実証実験の場を提供している。神奈川県産業労働局産業・観光部産業振興課さがみロボット産業特区グループの渡部力リーダーに聞いた。
-さがみロボット産業特区とは?
渡部リーダー
2013年2月に生活支援ロボットの実用化・普及促進を目指し、神奈川県中央部の10市2町(相模原市・平塚市・藤沢市・茅ヶ崎市・厚木市・大和市・伊勢原市・海老名市・座間市・綾瀬市・寒川町・愛川町)を対象範囲として誕生した。神奈川県のものづくりは京浜地域のイメージが強いが、この地域にはJAXAや日産自動車の研究所があり研究者人口が多く、センサーやモーターなどロボットの要素技術のメーカーが数多く存在する。圏央道のハブで交通アクセスも良く、ロボット産業に適している。
-特区の特徴は?
渡部リーダー
特区で主にサポートしているのは、介護・医療ロボット、生活支援ロボット、災害対応ロボットの三つの分野。規制緩和や財政、税制、金融など総合的に支援し、特に力を入れているのが実用化への支援だ。これまでにさまざまな規制緩和を実現し、難しかった実証実験を実施までこぎつけている。実施件数は、13年度は10件だったが、翌14年は17件に増え、今も多くの問い合わせが来ている。
例えば、旧薬事法では病院や介護施設内での実験は手続きが煩雑で、実験は大学や大手企業に限られていた。これを緩和して多くのメーカーが実験できるようにした。
いま話題の自動運転車も実験しやすい環境を整備した。公道での実験には道路交通法に則った公道の使用許可が必要で、これまでは最長3日間しか認められていなかった。しかし特区ではロボット実験に限って最大14日まで行える。
このほか、UWBなど電波を使った屋外実験は周波数干渉の恐れがあるため電波法で規制されていたが、これも調整済み。遠隔医療ロボットの実験でも、医師法で対面が原則とされていたが、実証実験であれば実行できるようになっている。
さらに「もっと長い期間で実験したい」「制約の少ない環境でやりたい」というニーズに対してプレ実証実験が可能な場を提供している。統廃合などで使わなくなった学校をプレ実証フィールドとしている。校庭や体育館など大きな空間があり「こうした広いスペースを探そうとしてもほとんどない」と非常に好評だ。
-これからについて。
渡部リーダー
もっと普及について考えていかないといけない。例えば生活支援ロボットを介護保険の適用範囲に入れるなど、さまざまな要望を提言していきたい。日常生活のなかで人とロボットが身近になっている世界を目指し、ロボット産業を支援していきたい。