製造業の収益構造に変化 国内生産・海外販売から、地産地消ベースに最適地生産へ

日本の製造業の稼ぎ方が変化しはじめている。これまで製品の輸出と国内工場への設備投資が日本の製造業を支えていたが、今は「日本の製品とものづくりの仕組み」をセットで海外に展開するのが成功パターンになっている。その強化・拡大のために重要となるのが、IoTやインダストリー4.0など工場の高度化。日本のものづくりモデルをより高度化することが収益化につながっていくといえる。

日本は古くから国内産業を育成し、輸出に力を入れてきた。国内工場で製造した製品を世界に輸出し、それに合わせて工場の設備投資を増やし、内需を活性化するサイクルで成長してきた。特に自動車や家電がけん引役となり、装置や部品、素材メーカーが潤い、さらにそれを支える中小企業にも波及。この流れが日本製造業の多様性と強さの源だった。しかし、今そのサイクルが変化している。

経済産業省が発行した「2015年度版ものづくり白書」によると、今の日本の経常収支黒字を支えているのは、第一次所得収支が中心。これまでは貿易黒字が中心だったが、それが第一次所得収支になっている。

第一次所得収支は、企業が工場など海外の現地法人を開設するために投資を行うと対外直接投資となり、その現地法人の収益は直接投資収益として計上される。海外の現地ビジネスが拡大すれば第一次所得収支は増える。10年に13.6兆円だったものが、14年には18.1兆円に拡大。今後もさらに伸びる見込みだ。

一方、貿易収支は、10年こそ9.5兆円で黒字だったが、翌11年に赤字に転落。以降4年連続で赤字が続く。原油など鉱物性燃料の貿易赤字がその要因だが、主要産業の輸出額がそれほど伸びていないことも大きい。

自動車や自動車部品、航空機、船舶など輸送機器は10年から14年までほぼ横ばい。工作機械や産業機械など一般機械も前年とほぼ同程度で推移。かつての貿易黒字の柱だった電子機器は年々縮小傾向で、10年に4.5兆円あった黒字が、14年には1.1兆円まで減少している。

日本の製造業の稼ぎ方が貿易を中心とした「国内生産・海外販売」から、第一次所得収支を主とした「海外生産・海外販売」にシフトし、国内生産だけで稼ぐ時代ではなくなっている。地産地消をベースに、市場に近い地域で生産して売り上げを伸ばす形に変化しはじめている。早くからそれを実行してきたのが自動車産業。欧米やアジアなど消費市場に近い場所に工場をつくり、国際競争力を保ったまま規模拡大に成功。現在の好調につながっている。

ものづくり白書でも「地産地消の流れは今後も継続していくものと考えられる。輸出以外に海外事業展開を通じて国富を得る。つまりは貿易収支に依存して稼ぐだけでなく第一次取得収支及びサービス収支でも稼ぐことが求められている」とし、収益構造が変化していることを示している。

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