現在は情報化社会といわれ、メディアやネットを通じて次々と情報が入ってくるし、いつでも必要な情報をアクセスできる時代になった。情報化時代に入る前には自分にしか知り得ない情報が結構あったから、情報という言葉に秘密性が感じられた。だからちょっとした情報でも持っていれば得をした気分になって、他人に耳打ちして少し得意になれた。しかし昨今のように情報化社会の中に入ると、かつて秘匿性の強かった個人の日記でさえ、ブログという簡便な方法でネット上に公開するのだから、情報を得意気に他人に耳打ちしても恥をかくだけである。しかし、情報こそが営業マンにとって重要なツールなのだ。
営業マンが目的とするのは売上げを上げることである。売上げを上げるのに一番重要なことは見込み客を開拓し、一人でも多くの顧客にすること。見込み客を顧客化するには人間関係の構築から始めなければならない。互いに緊張しなくともコミュニケーションがとれるようになったら、信頼関係をつくって何らかの要件をもらえるようにならなければならない。
部品、コンポ商品営業にとって情報といえば扱っている商品に関する情報であろう。商品の価格、納期や商品知識、アプリケ知識、システムサポートなどを情報として顧客に提供し、信頼関係を築いてきた。そのことによって売上げは伸び続けてきた。しかし昨今では、これまで行ってきた情報提供による商談発見、締結で売上げは伸びなくなってきた。顧客事態に需要増がのぞめなくなったからだ。そこで原点に返って見込み客を開拓し、1社でも多くの顧客化を狙った活動が重要となった。
しかし、ここで壁にぶつかっている営業が意外と多い。互いに緊張しなくなるまでの人間関係づくりが下手になったからだ。一般的に人間関係をつくるには単純に接触をくり返すだけで、ある程度の関係はつくれる。営業活動においても単純に接触すればいいという原則に変わりはない。これまで商品知識やアプリケーションの知識を習得し、顧客との関係強化を図ることが積極営業と言われてきたので、この方法以外で見込み客に会うために、単純に接触するやり方が分からなくなってしまった。
例えば見込み客に初めて会えた時に名刺交換するが、渡された名刺を必死に見つめ、名刺に訳されている情報で3分くらい話をするようなことである。名刺は相手方の情報である。その情報に食いつくことから接触を始めるのが人間関係構築の第一歩なのに、昨今の営業では名刺交換した後に主導権を取れずに、相手から「今日はどういったご用件で…」などと言って主導権を取られると、「良好な人間関係を築きたいです」という本音の代わりに、新商品を紹介したいとか、相手があまり必要としていないアプリ情報やシステム提案情報を話し出す。これではこれ以降、単純に接触する余地がなくなってしまう。仮に余地が残る流れになっても、次回あたりでダメになる。見込み客を満足させて取引に持ち込みたいのであれば、急いではならないのが情報化社会の営業である。ともかくスムーズなコミュニケーションができるまで、人間関係は時間や回数に比例することを深く理解すべきだ。
情報化社会だからこそ単純に接触を繰り返すにも情報が必要なのだが、提供する情報の吟味がむずかしい。それには二通りの考え方で準備するのがいい。(1)営業側のことを前面に出さず顧客側に立って考え、準備する。(2)営業マンの熱意が伝わるようなワクワク感のある情報の伝え方を考案する。(次回は8月19日付掲載)