これまで日本の製造業を支えてきたのは現場の力。工場の技術者をはじめ、営業の最前線など現場が日本の製造業を発展させてきた。少子高齢化で就労者数が減り、一方で事業領域がグローバルに広がるなか、製造業に必要な人物像とは?そして、IoTやインダストリー4.0時代に求められる人材とは?
経済産業省がまとめた「ものづくり白書」によると、雇用者側となる国内の製造業の事業所数は、1993年は41万3670事業所だったのが、倒産や廃業などで2013年には20万8029事業所と半減。就業者数も93年の1530万人から13年には1039万人に減少し、全産業に占める割合も23.7%から16.5%に下がっている。
さらに、2010年以降、団塊世代が定年退職を迎えて熟練者が現場の一線から離れている。少子化で若者世代の全体数が減り、34歳以下の若年就業者数も少なくなっている。
現在、製造業の人材は、入るよりも出る方が多い。今後、国内の人口が減っていくなかで、それを反転させることは難しい。製造業全体として、限りある人材を競争力の高い精鋭に育て上げなければならない状況にある。
では、実際にどういった方向で、どんな人材に育てることが必要か?
JILPT(労働政策研究・研修機構)が昨年11月に、10人以上の製造業企業に対し行った「ものづくり企業の経営戦略と人材育成に関する調査」では、「今後成長する上で必要と思われる取り組み」で最も多かったのが「営業力の強化(38.2%)」。次いで「改善の積み重ねによるコストの削減(35.0%)」、「優良企業からの受注の獲得/拡大(27.9%)」、「改善の積み重ねによる納期の短縮(26.4%)」、「高度な熟練技能を生かした他社にはできない加工技術や作業工程の確立(24.2%)」と続く。多くの企業で販路開拓のための「営業力」、従来の強みを受け継ぎ、世界が求める製品や技術をつくる「開発力」、世界のさまざまな顧客ニーズに応えるための「生産技術」の三つが欠かせないとしている。
日本の製造業は「海外生産・海外販売」に向かって舵を切っている。日本が担う役割は生産拠点から、次の仕組みを作る側に変化している。そこでの人材には、日本の強みを支えた熟練者の技を受け継ぎ、それをグローバル市場のQCDに対応できるように昇華することが求められる。
IoT、インダストリー4.0が進むなかで、それらをいち早く自社で実現する。リファレンス(参照)モデルとして仕組み化し、利益につなげていく。
単なる作業者から、最先端のものづくりを”つくる”人材へ。製造現場とITの両方の知見を備え、それを融合させる人材が、次の製造業をリードしていく。