電気通信大学は、蓄電池をネットワーク上でクラウド管理するバーチャルグリッド(電線を介さない電力網)システムの研究を行う「i-パワードエネルギー・システム研究センター(iPERC)」を設立し、7月31日に開設記念シンポジウムを開催した。
シンポジウムでは、来賓祝辞として文部科学省・川上伸昭科学技術・学術政策局長が同センターへの期待を述べ、科学技術国際交流センター・柘植綾夫会長が「持続可能な科学技術・イノベーション創造立国への道」と題して基調講演を行った。また、NEC・國尾武光執行役員、富士通・市村富保シニアディレクター、横河電機・伊東千明執行役員もエネルギーシステムに関してゲスト講演を行い、各社の取り組みについて紹介した。
iPERC設立の背景には、近年のエネルギー問題がある。先進国では再生可能エネルギーシステムの大型化が進む一方、発展途上国では太陽電池と蓄電池からなる小規模太陽光発電システム(SHS)の普及が拡大している。特に送電網が完備されていない発展途上国の無電化地域でSHSの普及が進んでいる。まして、後者は利用人口が格段に多く、世界のエネルギー消費の伸びに占めるOECD非加盟国比率は90%超との予測もあり、蓄電池のネットワーク管理技術の潜在的需要は激増している。これらの蓄電池をネットワーク管理することで、安全性の向上、利用効率の向上、SHS投資の拡大が見込まれる。
iPERCの活動ではこれらのバーチャルグリッドシステムによる「発展途上国での再生可能エネルギー利用の拡大による地球環境問題の改善」「分散型グリッドシステム技術の国際標準化による日本の産業競争力強化」を目指している。
市川晴久センター長は「産官学の連携を通じ、”地球規模でのエネルギー問題の解決””産業競争力の向上””グローバル人材の育成”に貢献する」と抱負を述べた。