端子台のトレンド
産業界はグローバル化によって、製品の開発、製造、調達、販売などが国境を越えて世界中とつながりつつあることは周知の通りである。また最近では、2011年にドイツから発信された「Industrie
4.0」というコンセプトが注目されており、産業システムの統合が話題になっている。これは産業機械や物流・生産設備のネットワーク化、機器同士の通信による生産調整の自動化などにより「スマート工場」を実現することを目指しており、モジュラー化、デジタル化、小型化、カスタマイズなどがキーワードとなってくる。このようなコンセプトは、IT技術やインターネットのネットワークに注目が集まるが、実際の「スマート工場」を確立するには、システムや機器の標準化、省スペース化、省力化といった基礎的な制度、技術の導入そして標準化が不可欠である。
どのようなハイテク工場であっても、電気を使用する限り電線による接続は必須である。ワイヤレス通信機器においても非接触電力伝送には限界がある。そのため、生産現場で使用される接続方式の見直しが近年加速化しており、各企業、各生産現場で次世代のトレンドに乗り遅れないための検討、導入が続いている。
世界中で使用されている端子台の接続方式は、大きくねじ式、スプリング式、圧接式、その他に分類される。一般的に欧州、北米に次ぐ産業の第三極と位置付けられている日本市場ではあるが、設備や機器の電力伝送、制御に使用される端子台に関しては、長年いわゆる丸圧着端子台が中心であり、スプリング式あるいは圧接式といった端子台は限定された用途での採用にとどまっていた。それでも近年スプリング式は省工数、省スペースなどの要望から採用が拡大しており、今後日本市場全体の半分位までは伸長するであろうと考えられている。
スプリング式の需要が伸びている背景にはいくつかの側面が考えられるが、まず、ねじ式は基本構造上の問題である「ねじは緩む」という点で、施工後の増し締め作業が必要で輸送中に振動で緩むといった難点がある。一方で、スプリング式の場合はその「バネ性」で電線を保持するためそれがない。同時に、同等仕様の場合、約半分の省スペース化が図れる。そして、スプリング式は元来ヨーロッパ発の技術がベースになっているため、CEマーキングをはじめとした各国、各地域からの規格要求にも対応できる製品が多く、海外での調達性に優れていることも、グローバル化の流れに沿っていると考えられる。このような特徴から、従来は輸出企業を中心とした採用が多かったが、最近では国内向けのアプリケーションでの採用が増え、大手企業や各業界団体でも推奨の動きが拡大している。
産業界のグローバル化が進む中、今までの日本の端子台規格JIS
C
2811は、国際規格であるIEC
60947-7-1と整合を図るために、2010年5月に「JIS
C
8201-7-1低圧開閉装置及び制御装置
第7部:補助装置
第1節:銅導体用端子台」として新たに制定された。新しい規格はIECに対してMOD(修正)として制定されており、電線の呼び方がIECとJISでは違いがあることから、JISに基づいた導体断面積および導体径を記載し同時に国内産業界で通用しているAWGも併記している。評価試験内容もIECに合わせて制定されており、旧JISでは規定のなかった「ニードルフレーム試験」が追加され、安全性の評価が強調されている。この新しいJIS端子台規格を受けて、2012年7月には、さらに「JIS
C
8201-7-2低圧開閉装置及び制御装置
第7-2部:補助装置-銅導体用保護導体端子台」が、いわゆる「アース端子台」の規格として制定された。このように、新しいJIS規格制定によって、規格上でもグローバル化が進んでおり、国際整合化をしているが、未だ旧JIS規格を採用して設計指針としている官庁、団体も多く、その仕様を変更していないケースも見受けられる。しかし、日本の産業界は今後ますます世界の中で活動を広げ、あるいは国際化を受け入れていかなければならないため、JIS規格の国際整合を、各官庁、団体、企業でも取り入れていくことが求められている。