NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、ユーザーニーズと市場化の出口を明確にしたロボット開発の支援に乗り出す。計画には単なる製品開発だけでなく、システムインテグレータ(SIer)との協業やロボット活用事例の周知活動も入り、2020年までに2.4兆円を目指すとしている。ロボット普及のけん引役として大きな期待が寄せられている。
助成の対象となるのは「ものづくり分野」と「サービス分野」で、具体的な製品化・販売プランが明確になっているものに対する支援を行うとしている。よりマーケットに近く現実的で、インダストリー4.0やスマートファクトリーに直結するのがポイントだ。
NEDOはものづくり分野のロボット導入に対し「自動車や電気電子産業を中心にロボット導入が進んできたが、中堅・中小企業へのロボット導入は遅れている。大企業でも、部品供給などの準備工程(段取り工程)などは、現在も人手が中心だ」と分析。今回の取り組みでは、配線やケーブルなど「不定形物」、食品やゲルといった「柔らかいもの」、光沢や透明部品など「認識が難しいもの」を対象とした作業を中心に開発を進める。
一方、サービス分野は「日本のGDP・就業者数の7割を占めるにもかかわらず、労働生産性の水準は諸外国より低い。バックヤードなど労働集約的な作業にロボットを積極的に活用することで、人がより高付加価値な作業に従事できる」とし、倉庫内のハンドリング作業やピッキング・仕分け・検品などの対物作業に適したロボットを開発するという。
2015年度はこれらの分野に15億円の事業費を計上。採択された10のテーマ(別表)に対して助成が行われる。
また、この事業は単なるロボット開発だけでなく、ロボットを購入して利用するエンドユーザーや、ロボットを現場に導入するSIerが共同参画しているのも大きな特徴だ。
いまロボット普及に向けて大きな課題と言われているのが、導入に踏み切るユーザーとそれを支えるSIerの不足。ユーザー自らがロボットの有効性を証明してモデルケースを数多く作り、同時にSIerを育成し、増やしていくというサイクルが構築されていない。しかし、今回の取り組みはメーカーとユーザー、SIerというロボット普及のカギを握る三者が参画し、非常に期待できる内容となっている。
NEDOは「開発されたロボットの早期製品化を促すほか、本事業で開発したロボット活用技術により、ものづくり分野およびサービス分野で機械化・ロボット化が困難だった新たなシステム・プロセスを提案してロボットを導入する業種・分野、工程の拡大を図る」とし、さらにSIerとの協業や事例の周知に取り組むことで市場の拡大を目指す。
目標は2020年までに、ものづくり分野で6000億円から1.2兆円へ、サービスなどの非製造分野は600億円から1.2兆円としている。