文房具は、極小部品が集まってできた精密なメカニカル製品。その製造工程は、緻密な部品設計と組み立て技術が必要で、さらに低コスト・大量生産という課題をクリアしなければならない。サインペンで有名なぺんてる(東京都中央区日本橋小網町7-2、TEL03-3667-3333、和田優社長)は、そんな文具製造で培った自動化技術を応用し、他業種向けの生産設備を外販し、オートメーション化を進めている。
生産設備の外販事業は、機設部を中心として展開。もともと生産ラインの構築は外部企業に委託していたが、情報流出で被害を受けたことから、自社製品は自社製設備で作ることを開始し、今も徹底されている。
「1963年に発売したサインペンは、もともと手作りだったが、大量注文に対応するために自動化ラインを構築することにした。ところが外部委託したところ情報が漏れて類似品が世界中に出回った。それ以来、生産ラインはすべて自社で作るようになった」。
文房具は、小さな部品が高精度に組み立てられて完成する。例えばボールペンは、部品同士の嵌合がしっかりできていないとインクが揮発してすぐに書けなくなってしまう。キャップをした時のパチンという音や感触も重要とされる。
またシャーペンも極小部品を組み合わせて芯の出具合やカチカチという押し感を作り出すなど、まさに小さな精密機器だ。「文房具は、高度なメカ設計とインクなど化学品の制御、高精度な部品を作るための金型と成形技術、さらに効率的に大量生産するための自動化技術と製造技術など、あらゆる要素技術の結晶だ」。
機設部では1981年に、文具製造に特化した水平多関節ロボット「PUHA」を開発。ハンド部にワークの投入と取り出しの二つの機能を搭載し、1台2役で組み立て装置やインサート成形システムに最適。
「PUHAのダブルツール機能は、金属部品と樹脂の一体成形を自動化するインサート成形システムに最適。自動車部品メーカーを中心に700セット以上の販売実績を挙げている」という。
現在、外販事業は医療分野にも注力。注射器の組立や注射針のインサート成形、薬品の精密充填や定量吐出など文具と構成要素が似ていて、技術応用がしやすいのだそうだ。
「売上げの70%以上は外販。文具で培った製造ノウハウと、今までのさまざまな業種向けの生産設備構築の経験を生かして、さらに拡販していきたい」としている。