プッシュインテクノロジー -次世代の接続方式(中)-

Sプッシュインテクノロジーの誕生

IEC規格に準拠したスプリング式端子台を採用する際のメリットは、省スペース、省工数、国際規格整合などが挙げられる。

まず省スペースだが、例えば一般的な20Aクラスの丸圧着端子台と、欧州式スプリング端子台を比べると、端子台幅は約50%小さくなる。また、スプリング式は端子台の上面から配線するタイプがほとんどのため、丸圧着端子台で必要な端子台とケーブルダクト間の配線スペースも削減することができる。端子台の幅方向、配線方向が削減されることにより、ボックスや制御盤を今までより小型にでき、その点でもコスト削減につながると同時に、端子台の小型化によって生じたスペースを活用し、そこに他の機能製品を設置して同じスペースでも製品の機能アップをすることも可能である。製品の小型化と高機能化という相反した要求を満たすことができるのは、大きなメリットとなる。

国内の一般的な丸圧着端子台と、欧州式スプリング端子台の作業時間を比較すると、スプリング式の場合電線の先端加工をせず、裸線での接続が可能であり、また、電線接続時にねじを緩めたり締め付ける作業をする必要がないため、作業時間が10%から25%程度削減できると言われている。しかし、実際には国内で使用される電線は海外電線よりも素線が細く、先端加工をしないと「ばらけ」たり「ひげ」が出たりするケースがあるため、フェルール(棒端子)を使用して先端加工をする場合が多い。先端加工をすると工数削減のメリットが減少してしまうが、省工数については施工後のメンテナンスを考慮する必要がある。

今まで端子台は製品輸送後、あるいは設置後の定期的な「増し締め」をすることが常識になっている。ねじの緩みを確認するため、ねじ締め後にマジックなどでマークを付ける日本式の作業も工数を増やす要因となっている。一方でスプリング式の場合、電線をバネ構造で挟み付けているので、基本的にゆるみはない。この検証をするため通常、端子台メーカーでは振動試験、衝撃試験などを行って製品評価をしている。つまり、施工時間は丸圧着端子台と比較してさほど変わらないと感じても、以後のメンテナンスが不要になる点は大きなメリットと言える。また、近年スプリング式の中でのトレンドになっている「プッシュイン式」の場合、フェルールで先端加工をしていれば、電線を差し込むだけで接続ができるため、メンテナンスフリーの省工数に加え、施工時の省工数、時間短縮も大幅に実現できる製品と言える。

2009年に発表されたスプリング式接続の一種である「プッシュイン式端子台」は、発売以来急速に世界市場に採用が拡大し、現在に至るまでその出荷数量は毎年大幅な伸長を見せている。それほど世界的に広がっている製品ではあるが、実はもともと日本市場の要望から開発された製品である。開発に先立って、自動車、工作機械、半導体製造装置、発電、電力、鉄道、船舶、信号、食品機械、産業設備、エレベータ、制御機器、マテハン機器、盤メーカーなど多岐にわたる市場から意見を聞き、市場調査を行った。その結果得られた日本の市場、ユーザーからの要望をまとめると以下に要約される。
・安全で簡単な接続
・信頼性のある接続
・(一つで)信号系、電源系に使用可能
・省スペース
・「渡り」と「マーキング」がしやすい
・国際規格適合
これらすべてを網羅する製品を具現化することは難題であるが、新しい「プッシュイン・スプリング」を開発し、Fast「速い」、Easy「簡単」、Safe「安全」、Reliable「信頼」、Efficient「効率」をコンセプトとして製品化を行った。当初は信号線用の2.5m2(24A)、4.0m2(32A)相当の仕様であったが、市場からの要望が高まり、更に省スペースである3.5ミリ幅の製品(1.5m2/17.5A相当)から、最近ではプッシュインテクノロジーの派生形であるパワーターン式も開発され、150m2(1500V/309A相当)まで製品レンジを拡大している。採用事例も制御盤の信号線から産業機械の電力系にも採用がはじまっており、プッシュインテクノロジーの市場認知度が高まっている。

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