端子台やコネクタ、ソケット、ケーブルアクセサリなどの配線接続機器は、産業全般にわたる好調に加え、社会インフラ整備やエネルギーに絡んだ需要が生まれていることなどもあり、活況を呈している。中でも端子台は、作業性や設置スペースを重視した開発が活発に行われており、使いやすさが一層増している。為替の円安基調が続いていることから素材価格の上昇が懸念されるものの、輸出が堅調を維持していることから追い風が継続している。海外工場の国内回帰の動きも一部出始めており、国内での設備投資増加への期待も高まっている。
国内の配線接続機器の市場は4600億円前後とみられる。コネクタが約4000億円、端子台・ソケットが500億円、ケーブルアクセサリ類が100億円ぐらいなっている。
金額の大きいコネクタは、単価の下落、海外生産の増加などもあり、グローバル需要では車載関係向けの好調も加わり拡大基調を継続している。ケーブルアクセサリ関係も、コネクタと同様の傾向と言える。
これに対し、端子台は国内生産の割合が高く、需要も国内が多くなっている。これに加え、海外メーカーの日本市場での販売活動が活発で、年々シェアを高めて市場拡大のけん引役を果たしている。
端子台を取り巻く国内の市場環境は、製造業の設備投資拡大で、工作機械やロボット、半導体製造装置といった端子台需要の大きな分野が貢献している。
2014年の工作機械の生産は過去2番目となっているが、15年は過去最高を越えて1兆6000億円台乗せが期待されている。ここにきて輸出の伸びが鈍化しているものの、国内向けは機械の老朽化と生産効率の向上を狙いにして買い替えや新規導入意欲が強く、継続した伸びになっている。
半導体・液晶製造装置も、スマートフォンやタブレットPCなどを始め、IoT時代に対応したセンサーや通信関連需要が追い風になり、拡大基調となっている。
ロボットは、海外では人件費の高騰や高精度なものづくり需要に対応して市場が大きく拡大。国内でも人手不足や安定した品質の確保、さらには介護やサービス用など、製造業、非製造業の両面から採用が増えている。15年は約1000億円増の7000億円台突破が見込まれている。また、社会インフラ関連の鉄道や上下水道、ビル関連も旺盛な投資が継続しており、受配電用途向けの端子台需要が拡大している。
PV(太陽光発電)システムや風力発電などの新エネルギー向けでの需要も大きくなっている。パワーコンディショナー、接続箱などには相当数の端子台が使用されている。
こうした再生可能エネルギーは、商用電気として使用するには、DCとAC(交流)を変換することが必要で、DC600VといったDC高圧化への対応が求められる。DCは、電流が大きく流れている中で強制的に遮断しなければならず、この分野でのDC対応端子台は、高圧による耐性が必要となってくる。最近では、DC1000V、DC1500Vに対応する端子台とともに、開閉機能も持たせた接続箱用の端子台が発売されているほか、コネクタについても高圧化への対応が進んでいる。
さらに、停止していた原子力発電の稼働が始まったことで、今後電力発電の投資再開への期待が高まっている。原発や火力発電など電力関連の投資波及効果は非常に大きいだけに、端子台市場の底上げが進みそうだ。
最近の端子台は、小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDC(直流)の高耐圧化などがトレンドとして挙げられる。
小型・省スペース化では、2段端子台やコネクタ端子台などが開発され、効果を上げてきている。
端子台の接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ネジレス式)、圧接式などがある。
日本はネジを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではネジ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。しかし、ネジ式は配線作業の手間がスプリング式に比べ多くかかるのが難点となっている。ネジとばねを組み合わせて、仮止め作業が容易にできるようにしたり、ネジの脱落を防ぐ構造にするなど工夫が加えられている。
スプリング式は配線作業の容易さと、作業スピードの速さでネジ式に比べ格段に優れている。日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ネジ式とスプリング式の作業性などを実機によって検証を行ったが、スプリング式はネジ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果が出ている。
スプリング式は、懸念されている接続信頼性の低下や振動による緩みについてもないと言われており、ネジ式でよく行われているネジの増し締め作業も省けることになる。
最近は市場のグローバル化もあり、欧州式端子台の採用が自動車、工作機械、半導体製造装置、食品機械、船舶、信号、電力など、使用分野が広がって来ている。従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けることが多かったが、国際標準化の流れもあり欧州式端子台に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも有効といえる。
欧州式端子台は、これまで小電流タイプが多かったが、最近は1500V/300Aクラスの高圧・高電流の動力・電源用途で、電線径150平方ミリという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。こうした用途は従来、ネジ式の使用がほとんどであっただけに、スプリング式の市場がさらに広がりそうだ。
PVや風力発電などの増加でDC用途でも使用できる定格絶縁電圧1500Vクラスの端子台も増えている。DCはACに比べ高い定格絶縁性が求められている。DCの用途が増加傾向にあるだけに、今後の端子台市場拡大につながるものと思われる。
端子台メーカーの多くが会員となっている日本電気制御機器工業会(NECA)ではこのほど「電気安全ガイドブック」をまとめた。このガイドブックはPVなどの増加で、DC電流に対する安全な使用方法をまとめたもの。DC機器のメンテナンスや火災発生時の消火活動など、従来とは異なった安全対応が求められることになる。
端子台は、取り付け方法で、プリント基板取り付け、DINレール取り付け、直付けなど、用途によって使い分けされている。また、メンテナンスの省力化と安全性の確保から、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに、端子台のカラー化で対応するケースが増えている。
■スタッド形やLED搭載、アルミ端子台なども注目
配線作業の容易化・省力化で効果の高いスタッド形端子台の需要も増えている。加えて、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる。メンテナンスを容易にする点では、LED搭載タイプは長寿命であり、取り替える期間が長くメンテナンス性に優れる。過酷な環境で使用する端子台は、材質に耐油・耐薬品性の高いものを使用し対応を図っている。
また、端子台のさらなる軽量化とコスト低減を図るため、端子部にアルミニウム合金を採用したアルミ端子台も注目されている。端子部を従来の銅合金からアルミ合金にすることで、端子部の重量を10%から30%軽量化できる。コストもアルミの原材料価格は、銅よりも安く安定している。性能面でも熱伝導性と放熱性に優れ、腐食しにくいアルミ電線の配線にも適しており、様々な産業分野で使用できる。
端子台は使いやすさの向上と高電流なDC市場の拡大で新たな時代を迎えようとしている。機器の安全と信頼性確保に向けた取り組みがさらに続きそうだ。”