サーボモータを中心とした、精密位置決め関連市場が堅調な拡大を見せている。新興国や米国を中心に、設備投資は好調を維持しており、人件費の高止まりや、製品の小型化など自動化ニーズも底堅い。一般的なサーボモータ以外にも、ダイレクトドライブモータ、リニアサーボ、エンコーダ内蔵のステッピングモータ、エンコーダなしで高精度なドライブシステムを構築できるセンサレスサーボ、出力軸トルク測定機能付きギヤードサーボモータなど、各メーカーが独自技術で新製品を開発し、ユーザーの選択肢は広がる傾向にあり、市場は拡大基調が続きそうだ。
■市場動向
サーボモータに注目すると、2014年度の国内生産額は1000億円を超えるまでに成長している。
日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産統計によると、サーボモータの14年度(14年4月~15年3月)の生産額は1004億円、前年度比21.2%と大きく増加している。JEMAでは15年度も同5.3%増、1058億円の生産見通しを立てている。従来通り工作機械、半導体・液晶製造装置など高精度な位置決めが求められる装置で多数採用されている。
■用途も拡大
従来、インバータとインダクションモータでの搬送制御が主流であった食品関係の装置でも採用が増えている。コンビニエンスストア向けなどでパッケージ装置のニーズが増えており、従来の搬送用途以外に「位置決め」「同期」用途での採用が増加。各社が販売する小型PLCでもモーションシステムが構築できるようになり、コスト的にもプログラミング工数的にもサーボモータ採用のハードルが下がったことも要因に挙げられる。オートチューニングの強化による立ち上げ工数削減も、装置メーカーの心理的ハードルを下げる要因になっていると思われる。製造製品の少量多品種化も進展し、新規に設計される製造設備自体が後々の改造を見越して、専用機としてではなく、汎用機として設計されるケースも増えている。
従来、シリンダなどの空圧機器で構成されていたアクチュエータ部分をモータ化し、多点位置決めを可能にすることで、センサと組み合わせて自動で段取り変えを行うなど、インダストリー4.0でいわれる「自律した制御」にサーボモータは貢献しており、今後もこの流れは加速しそうだ。
■増えるプレーヤー
「位置決め」に関する市場に、新たに参入するメーカーも多い。空圧機器メーカーやモーターメーカーが直動アクチュエータを発売したり、逆に直動機構部品メーカーがステージ自体を発売したりするなど、各社自社のコア技術を活用し、周辺機構までまとめて取り込もうとする動きが活発化している。
■使い勝手も進化
最高回転数、応答周波数、分解能などの基本スペックについては、今後さらなる高機能化のニーズは少ないとみられており、サーボモータ各社は、使いやすさに重点を置いた製品開発を進めている。熟練エンジニアでなくともパラメータ調整ができるオートチューニング機能、位置決め制定時間短縮に寄与する制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、配線工数削減はもちろん、コントローラとの相互通信を容易にする産業ネットワーク対応などで各社が競い合っている。
■進むネットワーク化
従来はパルス列による制御やメタル配線で接続する各メーカーの専用ネットワークが主流であったが、コントローラの低価格化も追い風になり、少ない軸数の制御で、近年は通信によるモーション機器の接続が標準的に採用されている。
モーションシステム全体をネットワーク化することで、サーボアンプから各軸の状況をコントローラ側でモニタリング・設定変更ができるようになるため、装置異常の早期発見や、段取り換えの自動化にも寄与する。
ネットワーク対応では各社の対応が分かれている。現在では、物理層にEthernet技術AAを採用したモーションネットワークが主流になりつつある。オープン化を進め、国内でも多くのメーカーが対応製品を発売している「EtherCAT」や「MECHATROLINK―Ⅲ」、モーション制御に特化した専用ネットワーク「SSCNETⅢ/H」、「Realtime Express」などが代表例として挙げられる。
モーターメーカーや、コントローラメーカー各社は、特定ネットワークに注力するメーカーと、複数のネットワークに対応製品を広げるメーカーに分かれ、今後、通信規格のシェア争いが注目される。
モーションコントローラ自体も選択肢が増えている。大手メーカーが開発販売する「モーションコントローラ」「モーションCPU」など、モーション制御に特化した専用コントローラ以外にも、I/O制御、画像処理、モーション制御などの機能をCPUにすべて標準搭載しているオールインワンタイプの製品も発売されている。
また、欧米を中心に海外で普及しており、日本国内ではこれから普及が見込まれる「産業用PC」や「市販PC」を使ったモーションシステムも、性能と使い勝手の良さから期待されている。マルチコアCPUを採用し、各コアで「モーション制御」と「アプリケーション」を分業することで、安定性と使い勝手の両立ができるようになっている。かつてはメーカーごとに異なる言語でのプログラミングが必要で、設定用アプリケーションをその都度覚えることが当たり前であったが、若手エンジニアを中心に、今後は汎用言語でプログラミングし、機器メーカーに依存しないシステム構成も増えていくと思われる。