フューチャーイノベーションフォーラムは、イノベーションワークショップ2015を行い、「IoTでビジネスを変える~第四次産業革命の最前線~」と題した講座を行った。ドイツとアメリカを事例に、IoTがビジネスを変え、日本ならではのビジネスについて意見を交わした。
同ワークショップは2007年にスタートした次世代リーダのための業界を超えた交流会で、今年はIoTをテーマに行っている。今年3回目となる今回は、サイバー大学IT総合学部
前川徹専任教授を講師として行われた。講演概要は以下の通り。
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IoTの本質は生産性の向上と価値の創出にある。これまで人が経験と勘で行ってきたプロセスをデータ化することで作業が効率化され、生産性が大幅に上がることが見込まれている。
特に生産性の低い農業や医療・ヘルスケア、土木分野における効果への期待は大きい。
オランダは、世界に先駆けて農業にITを取り入れた国のひとつだ。農産物の発育状況をセンサーで個別に把握し、温度管理や水やりなどの作業を自動化し、生産性を飛躍的に向上させた。また経済動向を見ながら農産物を市場に出すタイミングを計り、高い収益率を確保している。
医療では、米国で発売された「スマートフォーク」が注目されている。口に運ぶスピードや回数を感知し、食べるペースが速いとフォークが振動して警告する。急いで食べるのを防ぐことができ、ダイエット効果も期待されている。また東レとNTTが共同開発したTシャツは、心拍数や心電波形を計測できる。日常的にデータを収集すれば、病気の治療や予防医療にも役立てられる。
米国ではゴミ箱の”スマート化”も進んでいる。
ゴミ箱に取り付けたセンサーがゴミの量を感知し、自動的に業者に通知する仕組みだ。回収のタイミングやルートが見直され、コスト削減に一役買っている。また土木業界では建物や橋梁、道路、下水道管などにセンサーを取り付けて形状の変化などのデータを収集し、防災やメンテナンスに活用しようという動きが広がっている。
IoTを巡っては、ドイツや米国を筆頭に世界で覇権争いが繰り広げられているが、まだ主導権を手にした国や企業は現れていない。
今後本格化するIoTビジネスにおいて日本企業が世界をリードしていくには、同じ土俵で戦える今こそ、あらゆる可能性にチャレンジすることが大切だ。
日本企業の強みは、現場に強いことにある。お客様のニーズを吸い上げてサービスや事業に生かす能力に優れており、それを実現できる高い技術力もある。失敗を恐れず果敢に挑戦してほしい。そのチャレンジの積み重ねが、日本経済の活性化にもつながると期待している。