テラヘルツ波は、電波と光の境界にある電磁波で、直進し収束できる光の特性、物質を透過する電波の性質という両方を兼ね備え、最近になってようやく活用が進んできた波長帯だ。パイオニアは光ピックアップ等で培った光学技術を使い、テラヘルツ波の活用に力を入れている。
テラヘルツ波は、布や紙、木材、樹脂を透過し、金属や水は透過しない。一方で、X線よりはエネルギーが低いため使用環境に制限がない。同社は、この特性を利用したテラヘルツ波スキャナーを開発している。
本体とヘッドが分かれたハンディヘッド型と、測定物にスキャナー本体を載せて使う一体型の2種類をラインアップ。いずれも従来のテラヘルツ波スキャナーよりも小型軽量で、使い勝手が良いと高く評価されている。
「これまでのテラヘルツ波スキャナーは、非常に高額で大型だった。それを小型化し、各アプリケーションに最適な形に落とし込んだ」(新規事業部研究開発部第5研究部小笠原昌和部長)。
具体的なアプリケーションでは、プラスチックと金属の複合材や、樹脂コーティングの厚みの管理といった品質管理での導入、さらに水を透過しないという特性を生かし、建築系での採用も検討されている。マンションなどの外壁の剥がれや漏水の検知、橋脚や鉄塔などインフラの点検での活躍も期待できる。
ユニークなところでは、文化財の修復などでも使われている。絵画や屏風(びょうぶ)などを撮像して断面を見ることで、修復履歴や劣化具合などが分かるという。
とはいえ、テラヘルツ波の活用はまだ始まったばかり。これから本格的な普及が待っている。小笠原部長は「デバイスも安くなりはじめ、これからテラヘルツ波が盛り上がると言われている。ミリ波はミリ波レーダーで一気にブレイクしたが、テラヘルツ波でもそうなるキラーコンテンツが必ずあるはず。いち早くそれを見つけ、業界をリードする存在になっていきたい」と話している。