弊社は自動ドア・セキュリティセンサのオプテックス社の子会社であり、FA用センサの開発・製造・販売を行っている。
元々はドイツのSICK(ジック)社へのFA用光電センサのOEMからスタートしており、現在に至るまで25年以上その供給は続いている。
ドイツのSICK社は11億ユーロ(約1500億円:1 ユーロ=137円換算。2014年度)を売り上げる、世界有数の大手センサ専業メーカーであるが、そのSICK社と弊社との協業を通して分かったインダストリー4.0の現状について報告する。
■ドイツのお国柄
まずドイツと言っても歴史的には複雑な経緯をたどっており、地域によってその歴史・気質も様々である。ここで挙げているのはあくまで一例として捉えて頂きたい。「ドイツの本は定義から始まる」と言われるように、ドイツ人はまずルールやゴールを定め、それに従って話を進める気質がある。一度ルールを決めてしまえば多少の無理があっても、全員が一致してそれを完遂する。
■「インダストリー4.0」の現状
「インダストリー4.0」はドイツの首相・大企業をはじめ、国が一致団結して推進している。こうして一度始めた以上、その推進力は非常に強い。では、その詳細はどうか?
インダストリー4.0は「スマートファクトリー(考える工場)」「IoT(モノのIT化)」など様々な側面で語られているが、その具体策は今ひとつはっきりしない。実際に現地で話を聞くと、「今までも売られていた商品が、突然『これもインダストリー4.0だ』と言い始めた」という事例も多い。
「何をもってインダストリー4.0か」は各社に委ねられており、その定義はかなり緩やかだ。
■SICK社の戦略
SICK社の場合、フィールドバス(工場用の通信規格)の一つ、「I/O link」の搭載を「インダストリー4.0」と位置づけている。
具体的には、まず彼らの光電センサ商品群を「上位(特殊用途)」「中位」「下位」に再分類した。このうち「中位」に分類された機種は順次I/Olink対応を行う、というのが彼らの戦略である。
汎用光電センサは安価なため、通信対応は長らく進まなかった。SICK社は市場のニーズありきではなく、「インダストリー4.0対応」を名目に猛烈な勢いでラインアップを展開している。これで他社に対して劣る通信機器のラインアップを増やし、一気に追いつこうとしているようだ。
このように「先にルールを決めて一気に進む」というスタイルは非常にドイツ的と言える。
■日本はどうすべきか?
先に挙げたように各社の対応は統一しておらず、それが諸外国から見たインダストリー4.0の「わかりにくさ」につながっていると考えられる。
実際にインダストリー4.0をうたう商品・サービス・規格を見ても、個々の技術で革新的なものがあるわけではなく、既存技術の組み合わせ・展開・普及がその中心である。
我々が警戒すべきは、その「出口」だろう。インダストリー4.0の結果として、現在普及していない技術が規格化されたり、業界のデファクトスタンダード(事実上の業界標準)となる可能性がある。
現状、ドイツ全体として特定の技術や規格を推進している訳ではない。しかしどこかの段階で規格化に向け、特定の企業グループが連携を取り始める可能性がある。日本としてはその動きを追い、流れに遅れないようにするか、対抗となる規格推進に向けて連携を組むなどの必要があると思われる。