部品や機器の営業は、見込み客から商品資料や見積もりの依頼を受けて、初めて訪問する時に問い合わせ事項の準備と会社案内を持って出かける。問い合わせの用件が終わって、自社の会社案内を済ませた後に、見込み客は何をつくっている会社なのか、面会している技術者は何をつくっているのか、を聞くだろう。その回答によって、営業マンはどういう業態のメーカーなのかを感覚的につかんで辞することになる。その後再び訪問して営業活動を継続しようとするが、前回の問い合わせ事項が完結しているので、思ったように話が続かない。その後の訪問が切れてしまうことが多い。うまくいかないのは当然で、見込み客はどんな会社か、感覚的につかんではいるが、どの会社にも同じような攻め方になってしまうからだ。
まず、売れ筋の商品をアピールする。課題や、困り事などがないかを聞く。納期、価格、品質、特徴など競合他社と比べて優位性を訴える。相手をよく知らないのに商品のアプリケーション売り込みを行う、などの営業になっている。見込み客の事情がよく分からなくても、このような内容の営業が2回目以降も効果があったのは成長時代のイナーシャが残っていた頃までであった。見込み客は事業の業態によって、それぞれの事情が異なっている。したがって問い合わせ用件を完結して、それ以降の訪問を続けていくためにはアプローチの仕方を業態別に変えなければならない。
事業の業態区分は5つぐらいに分けるのがいい。(1)製造業や非製造業で使用する自動機械や装置のメーカー(2)電気部品を組み込んだ業務用機器・産業用機器メーカー(3)プロセス監視体制を主とした設備の原材料をつくる装置産業型メーカー(4)中間材や完成品をつくる加工・組み立て型メーカー(5)業界用語でベンダーと言われ、専用治具や装置をつくるメーカーや、盤や基板アッセンブリ、ハーネス加工などをする電装設備関係のメーカーの5つである。
成長時代から行ってきた競合優位商品や新商品のPRを2回目以降の訪問の武器にしてもいいのは(1)の業態の見込み客である。国内での物づくりの増設は少なくなったが、物づくりのための自動機や装置はグローバル需要に向けて拡大を続けているし、海外メーカーとの国際競争は激しくなっている。これらのメーカーからは価格、品質のみならず通信、省エネ、環境性、安全性、操作性、形状などの高機能の要求が次々と出てくる。それに合わせて部品メーカー、機器メーカーも新商品を次々と出してくるので、部品や機器営業との相性がよく、相思相愛的なところがある。したがって(1)の業態のメーカーでグローバルの戦いをしている見込み客には、成長時代の延長戦のやり方で通用する。
ならば、(2)の業務用・産業用機器メーカーも次々とシリーズ製品を設計しているから、同じように新商品や売れ筋商品のPRが2回目以降の訪問に有効のように見える。しかし、(2)の業務用・産業用機器メーカーが主として使う部品は機構部品と電子部品である。新しいシリーズ製品を設計する際に使用する部品は、それほどに違うわけではない。それに一般汎用の機構部品や電子部品であれば、設計者は実績を重んずる傾向があるので同じ部品を使う。あるいは、それほど違わないので使い慣れている部品を使う。日進月歩を続ける新型のICのような概念をもった電子部品のPRなら設計者も会ってくれるだろうが、カタログ化されている汎用部品では競合優位の新商品と言われても設計者は乗ってこない。したがって2回目以降のアプローチには商品以外の方法を考えなくてはならない。(3)(4)(5)に関しては紙面を変えて具体的に考察する。(つづく)
(次回は10月8日付掲載)