「ライン設計の成立性検証」という観点で、現場でどのような課題が起こっているのかをアンケート結果から抽出すると、典型的に以下のような課題があることが分かった。
1〓出来上がった設備が設計通りの生産能力を発揮できず、現場での装置レイアウト変更などを余儀なくされるケースが多発。稼働後に追加費用が必要になる。
2〓設備単体としては設計通りの能力があるが、前後工程とつなげると搬送工程などのロスタイムが想定以上に大きく、ライン全体として目標のタクトタイムを達成できない。
3〓最悪の場合には、生産計画を達成することができず、残業による人件費増加や、納期遅延・欠品によるクレームを引き起こしている。
では、ライン設計はどのように実施されているのだろうか。実は圧倒的多数である73・7%(全76件中56件)もの企業がベテラン設計者の経験に依存しており、十分な設備能力の検証がなされていないのである。(別図)
また、エクセルで検証している場合も、装置内の各挙動(搬送時間、加工時間、待ち時間など)に要する時間を記入・計算している程度で、最も時間を要する部分(ボトルネック)をあぶり出すための活用にとどまっていた。
結局、ベテラン設計者の経験に大きく依存しているのである。
さらに、複数装置でラインが構成されている場合、前後工程との連携に要する時間があまり考慮されていないことも判明した。
設備単体の能力ばかりがクローズアップされ、工程間の待ち時間や突発トラブルの確率などは考慮されず、「設備単体の能力の合算に、20~30%のバッファを見込んだものをライン全体の能力とする」といったアバウトな検証しか行われていないことが大半であった。
なぜ、検証が十分に行われないのだろうか。
次号では、調査によって判明した「検証が行われない背景と解決方法」を掲載予定。
(つづく)