近代戦兵団を構成した歩兵・騎兵・砲兵
営業活動にも三種の兵力
戦闘機や機甲師団の登場によって戦場の様相は一変した。それまでは、戦場に大砲が登場するまでの長い間、兵団の兵種は歩兵と騎兵で構成されていた。大砲が登場してからは近代戦になり、兵種が一つ増えて、歩兵・騎兵・砲兵の三種となった。
飛行機や機甲師団のような機械による機動力がなかったので、戦場は相互が対峙(たいじ)する合戦の形をとった。ナポレオン戦争、アメリカ南北戦争、そして最後の近代戦といわれる日露戦争がそうである。
合戦において主力の兵力は歩兵であり、歩兵で相手を撃滅・撃退し、陣地を奪取する作戦に砲兵と騎兵が加わる。砲兵はさく裂の威力で敵兵の阻止や、敵陣を崩して味方の歩兵が攻めやすくしている。砲兵の威力はものすごいものであるが、弱点は敵が懐に飛びこんできたら砲兵はなすすべがなく逃げるしかない。逃げるにしても高価な大砲を敵にむざむざ取られたら大いなる損失になる。だから砲兵を守り、大砲をひいて後退するのを助ける歩兵部隊がいる。
映画のシーンで、突撃してくる騎兵の一団が次々と砲陣の柵を跳び越えていくさまは、勝利の見せ場となる。騎兵は機動力が持ち味である。すばやい出足で敵の弱点を突いて機先を制すれば、戦局を有利に運ぶことができる。有利に運ぶチャンスを多くするには騎兵を多くすればいい、ということになる。
しかし騎兵にも弱点がある。お金がかかることである。馬を飼育し保有するには多大な費用が発生する。戦時下にない平和な時でも、たくさんのお金が必要になる。したがって騎兵の数は限定的とならざるを得ない。歩兵も常備軍として平和な時にも費用は発生するが、馬を飼育したり保有したりすることに比べれば安いものといえる。それに歩兵は、戦時になれば特別徴集も可となる。合戦では兵数の多さが戦場の有利さを確定する場合が多いから、兵種は歩兵が主力兵となる。戦場の指揮官はこの三種の兵力をどのように采配し勝利するかに腐心する。
現代の営業戦線において、インターネットの登場で営業を取り巻く環境はかなり変わった。
営業活動をしていると、情報は命ということが身につまされる。情報の伝達や収集のスピードは、ネットの登場の前と後では格段の違いがある。ネット登場の前では、営業の情報発信力は顧客にとってかなり有用なものであった。ネットの登場により、顧客は必要な情報を必要な時に簡単に手に入れてしまう。しかしネットの登場により環境が変わったからといって、営業の本質が大きく変わるものではない。
近代戦線の兵団には歩兵・騎兵・砲兵の三種があるように、営業戦線にも三種ある。歩兵に相当するのはエリア内の全般を担当するエリア営業であり、騎兵に相当するのはエリア営業とは一線を画し、大口顧客のみや特別な業界、特別な商品を担当するフォーカス営業である。さらに個別配送システムの登場によって通販営業が加わり、砲兵に相当する役割を担っている。
まず、騎兵に相当するフォーカス営業を考察してみる。近代戦線の騎兵は敵軍の偵察を行い、その機動力を生かして敵軍の意表を突き、退路をすばやく遮断して戦局を有利に導くなどの重要な役割を担う。営業戦線においてフォーカス営業は戦略的に顧客・業界・商品がフォーカスされているのが特徴である。したがってエリア営業に比べると機動性はあるが、顧客が散らばる傾向がある。そのため採算面の費用は高い。フォーカス営業の重要な役割は、採算面をクリアする売り上げ規模と新たに売れる商品開発や今後伸びそうな市場、顧客の発見である。