日本能率協会コンサルティング(JMAC)は、08年にタイ現地法人JMAC(タイランド)を設立した。タイ法人の社長を務める勝田博明氏によると「タイでは開発機能充実化の相談が増えている。また生産関連では品質改善の要望が強い」という。そこでJMAC(タイランド)は、品質問題を未然防止する手法である「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」をテーマにしたセミナーをバンコク都内のホテルで開催した。
講師を務めたJMACコンサルタントの吉村達彦氏は、セミナー冒頭で「新しいことに挑戦しているため品質問題があるのは仕方がない」との声があることに触れ、「品質問題は従来のシステムの変更部分で起きている」とし、「品質問題の大半は従来技術で予見できたはずのもの」と言い切る。
さらに問題発生時だけの対応では不十分と指摘。ハインリッヒの法則とよばれる経験則によると、労働災害では、重大事故1件の背景に29件の軽度の事故と300件の被害のない異常がある。それを徹底的に分析し、リスクを共有すれば重大事故を防止できるということに触れ、「これは品質問題にも当てはまる」と断言。早い段階で品質問題に気づくかどうかが重要で、それを高める方策として有効なのがDRBFMだという。
それでは、どのようにしてその問題を発見していくのか?
重要なのが、リスクを明確にした設計を行い、その設計をディスカッションすることで問題を発見するという流れだ。
一般的な開発プロセスでは、レビューアー(評価者)は、試験でははじめから問題のないことを期待し、問題を積極的に見つけようとする過程が存在しない。そのため、多くの問題が見逃されることなる。吉村氏はそれを解決するためにも、仕事の中心に「問題発見」を位置づけるよう提言する。
しかし、設計者は「設計に問題がない、問題があって欲しくない」と考えるのが常であり、そのために他の人が問題を発見することで設計者とともに解決していくシステムが必要だという。ここでDRBFMが登場することになるが、まず他人が問題を発見することに対する抵抗感を設計者から排除することからはじめ、他人による問題発見は設計者を助け、ひいては顧客を助けることにもつながることを共有することが大事になる。
その上で、観察も議論も設計の変更点に限定することで効率化を図ることができる。そして、実のある議論を行うためにも、良い場をつくってこそ初めて十分な討議ができるという。レビューアーは心得として、「技術に厳しく、人には優しく褒めること」が求められる。DRBFMの様子をビデオ撮影して反省会を行うのも有効になる。
レビューアーは専門家ら計10人前後が選ばれるが、出席者に後工程の人を選ぶことも重要だ。設計者と別の視点から問題を指摘してくれるだけでなく、後工程に情報が正確に伝わることにもなる。前工程と後工程の情報理解の差を縮めることは品質問題の発生を抑えることにもつながる。
なお、変更点をベースに考えるのは設計だけでなく、企画の変更を検証する場合も同様だ。また自動車業界ではサプライヤーが製造工程でDRBFMを使うケースが増えているとのことだ。