「自社にロボットを導入したいがどうすればいいか分からない」「本当にロボットを使えば生産効率が上がるのか?」中小企業にとってロボット導入はハードルが高く、各社が対応に二の足を踏んでいるのが実態だ。そんななか、さがみはら産業創造センター(相模原市緑区西橋本5-4-21、TEL042-770-9119、橋元雅敏社長)は、地元企業がロボット導入や生産性向上を気軽に相談できる「ロボット導入支援センター」を今年9月に開設した。そこで開設の狙いについて聞いた。
-御社について。
当社は相模原市と中小企業基盤整備機構、相模原商工会議所、地元企業の出資により設立された。地域企業の経営サポートをはじめ、人材育成や連携・研究開発、投資など、地域産業の支援を行っている。ロボット導入支援センターはその一環として9月1日にオープンした。
-センターの狙いとは?
相模原市には、機械加工や電子機器などものづくり系の企業が集まっている。彼らの多くは、人材採用やベテラン技術者の引退などに課題を感じ、これらをロボットで解決できないかと考えている。しかし、メーカーやSIに話を持っていくと営業が絡み、相談ベースで公平な話ができない。そこで相模原市が地方創生交付金を活用して当社に委託し、中小企業が気軽に相談できる窓口としてセンターを開設した。
-どんな相談ができるのか?
自社工場の生産性を上げたい、困っていることを率直に聞かせてほしい。
私(ロボット導入支援センター 宮川孝文統括コーディネーター)は大手精密機器メーカーで30年以上、生産技術に携わり、ロボットを含め種々の手法で生産性向上に努めてきた。中小企業診断士として製造業の中小企業のコンサルティングも行っている。こうした知見とネットワークを生かし、ロボット導入ありきではなく、現場改善や自動化、治具化など生産性向上の解決策を相談者と一緒になって考えていく。
スタートして2カ月ですでに数社の自動化コンサルティングを行う話が進んでいる。
-展示しているロボットのデモについて。
現在、実機を使って三つのパターンの事例を展示している。基本的には組み立て系の用途を想定している。
一つは「ビジョントラッキング」。コンベア上を形の異なるワークが流れ、それをマシンビジョンで瞬時に判別し、取り上げて収納する。多品種混流生産をイメージしている。
二つ目が「ワークハンドリング」。工作機械へのワークの着脱をイメージし、7軸ロボットを使ったデモになっている。
三つ目が双腕型の協調ロボットによる組み立てデモ。両手を器用に使った小型部品の組み立て工程を再現している。展示会やメーカーのデモルームを除くと、ロボットが実際に稼働している様子を見られる場所はほとんどない。どんな風に動いているのかなど、ぜひ気軽に見に来てほしい。
-今後について。
当センターでは、技術セミナーや研修も積極的に行っている。通常、企業やセミナー会社だと受講料が数万円かかるような内容のものを無料で受けられる。
例えば「ロボット操作教育」は、三菱電機システムサービスの技術者が講師を務め、修了者には三菱電機から修了証が授与される。「自動化・省人化セミナー」では、三菱電機主席技監で日本ロボット学会の前会長の小平紀生氏らの講義が20人の少人数で聞くことができる。いずれも評判は上々で、二つとも満員だ。
ロボットを導入したい、生産性を向上したいという企業には、技術相談やセミナー受講など当センターをうまく活用して利益につなげてほしい。またソフトウェアやアプリケーションの開発企業、ロボット関連の周辺ハードウェア等を研究開発するような企業にも積極的に活用してもらい、新たなロボットビジネス創出ができたらうれしいと思う。