IoT、インダストリー4.0、インダストリアルインターネットに対し、日本企業はどのように対応していけばよいのか。またそれに対応することでどんなメリットが生まれ、新たなビジネスにつながっていくのか。GEやシーメンス、ボッシュをはじめ、世界でも最先端のものづくり革新に取り組んでいる企業の動向をまとめた。
10月28日に行われた経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会の資料「欧米企業の動向」では、GEやシーメンス、ボッシュなど主要企業の「ものづくり革新(BtoB)」における事例を紹介している。
同資料によると、米・GEは予知保全プラットフォーム「Predix」を開発し、自社工場だけでなく、電力や石油・ガス、鉄道、航空機などの顧客向けサービスを提供。2014年度に11億ドルの売り上げを創出した。15年8月には「Predix
Cloud」でサードパーティーもプログラムを提供できるプラットフォームとしてサービスを拡張。「ものづくり企業からソフトウェアを活用したサービス企業へ」変化している。
米・ハネウェルは、古い設備を使い続けている製造業の企業に対し、クラウドを活用したリアルタイム監視などを段階的に導入できるサービスを提供。中小企業でも利用できる形にして広範囲に網を広げている。
ドイツ・シーメンスは、センサを搭載した設備同士を同一の通信規格で接続。ICタグで製品工程をリアルタイム管理し、あらゆる情報を機械同士で共有。顧客の注文に応じてさまざまな製品を作れる体制を整えている。
ドイツ・ボッシュはインダストリー4.0の一環として、世界265カ所の自社生産施設をすべてネットワーク化。生産性30%アップを目指している。物流を含めた顧客に対しても同じネットワークシステムの提供事業を開始している。
米・ハーレーダビッドソンは、老朽化工場を最先端の「スマート・ファクトリー」に刷新。すべての製造装置と移動搬送機器にセンサを取り付け、稼働状態と位置を監視し、製造拠点を丸ごとモニタリングできるようになっている。カスタム発注を受けると1台分の部品リストを取り込んで生産計画を策定し、すぐに製造を開始。マスカスタマイゼーションを実現している。
ドイツ・アディダスとエンジニアリング企業のマンツ(Manz)は、16年に完全オートメーション化した靴工場をドイツ国内に開業する予定。「スピード・ファクトリー」と呼ばれ、顧客の好みに応じた靴のカスタムパーツの製造拠点になる。同時に複数の部品を柔軟に作る体制を目指している。
米・ボーイングは、航空機の製品・機器販売から運航管理サービスまで幅広く手掛けるビジネスモデルを構築。リアルタイムに最適な燃料消費や天候条件に応じた航路計算ができるシステムを航空会社に提供している。
■3.9兆ドルの経済価値創出
主要シンクタンクが調査したIoTがもたらす経済価値の試算によると、マッキンゼーは25年のIoTの経済価値を3.9~11.1兆ドルと試算。シスコは13年から22年の10年間で14.4兆ドルの経済価値を創出すると見ている。ガートナーは20年のIoTによる経済価値を1.9兆ドルとし、アクセンチュアは30年までにIoTで創出されるGDPを14.2兆ドルと試算している。
特にインパクトの強い領域とされているのが、製造業を中心とした「ものづくり革新」の分野。経済産業省の分析によると、グローバルベースで3.9兆ドルの経済価値が生まれると試算している。
生産効率化による利益創出に加え、ハーレーダビッドソンやアディダスのような既存サービスの拡充、さらにはGEやボーイングのような新たなビジネスモデルのスタートなど、IoTは既存の製造業の形を変える可能性がある。