IoT・スマートファクトリー 3DCAD、PLMからIoTプラットフォームまで 「工場の見える化」を技術で後押し

「PTC Creo」「PTC Windchill」など各種ソリューションをそろえ、3DCADやPLMの世界トップメーカーとして製品の設計データを作る設計開発工程から生産、サービスまで一連の工程を支えているPTCジャパン。IoTに対してもGEとパートナー契約を結ぶなど積極的に展開している。IoTに対する取り組みについて成田裕次製品事業部執行役員に話を聞いた。

-CADやPLMのイメージが強い御社が、IoTに取り組み始めたのは?
2013年にIoTアプリケーションの開発プラットフォーム「ThingWorx」と、クラウド接続のトッププロバイダ「Axeda」を買収し、IoT市場に参入した。

当初は、製品が市場に出た後のデータを集め、それを次の製品開発やサービスにフィードバックするような活用法を想定していた。しかし実際には「工場の見える化」の案件が多く、全体の商談の60%が自社の製造現場をIoT化したいという話だ。すでに当社のお客様以外にも、多く製造業の方々からお問い合わせをいただいている。

-IoTにおける御社の強みは?
グローバル競争に勝ち抜くためには、「デジタル化」「グローバル化」「規制対応」「パーソナライズ化」「接続性」「ソフトウェアによる製品の高度化」「製造業のサービス化」の7つの力が必要だ。

これらに対するソリューションとして、3DCAD、PLM、ALM、SLMなど、製品の設計開発から生産計画、サービス計画まで製造業の各プロセスで必要な製品がそろっている。加えて、それを支えるIoTプラットフォームも持っているのが特徴だ。

具体的には、ThingWorxとAxeda、ビッグデータ分析、機械学習の「ThingWorx Machine Learning」、作業支援などで使われている拡張現実(AR)の「Vuforia」など、今も増えている。

また、工場の最適化ソリューションとしてGEの「ブリリアント・ファクトリー」と、フィールドサービスの業務支援分野ではサービスマックスといったグローバルメーカーともパートナー契約を結び、サービス範囲を広げている。

-ThingWorxとはどのような製品なのか?
IoTアプリケーションを簡単に開発設計できるプラットフォーム。プログラミングがいらず、従来の10倍のスピードでIoTアプリケーションを開発でき、変更や拡張も容易。最新のテクノロジーで人やシステム、装置・機械などの工場内のあらゆるデータを統合管理し、相互に関連づけることができる。

特にブリリアント・ファクトリーでのGEとのパートナーシップでは、GEの製造向けソリューションにThingWorxが組み込まれ、柔軟で簡単なダッシュボード構築や強力なデータ解析の実現を可能にしている。各種KPIのリアルタイム提示や全工場におけるKPIモデルの標準化など、強力な最適化機能に大きく貢献している。

-採用例は?
アメリカの特殊金属メーカーATI(アレゲニー・テクノロジーズ・インク)では、ThingWorxで設備のチョコ停をベンチマークし、稼働率8%の改善につなげた。ある世界的な飲料メーカーは、世界中の工場の稼働状況の一元管理にThingWorxを使っている。

自社製品のサービス部門に活用している例としては、スウェーデン・ELECTAががん治療に使う放射線治療機について、稼働状況の遠隔監視と組み込みソフトのアップデートに役立てている。

臨床検査機器メーカーのシスメックスは、米国で自社の血液検査装置をネットワーク経由で遠隔監視しているが、今度はThingWorxを使って機器の利用回数による新たなビジネスモデルにチャレンジしている。

-日本の製造業のIoTの取り組み状況をどう見ているか?
日本は優れたITインフラがあり、他国に比べて進んでいる。例えば、エレベータなど昇降機や建機、コピー機などの複合機メーカーは昔からIoTをうまく活用している良い例だ。

彼らのビジネスモデルは、製品の売り切りではなく、保守やメンテナンスも含めた総合サービス。機器の稼働状況や部品、消耗品の減り具合を管理し、トラブル時にはすぐに出動する。アナログ的に行ってきたものを、稼働状況のモニタリングなど新たな技術で出動回数や作業時間を減らして効率化につなげている。

一方、製造現場を見える化して生産効率を上げるといった分野では、まだ進んでいない印象を受ける。IoTの導入効果、ROIを算出しづらく、効果が分からないものはやらない・やれないという手探り状態の企業が多い。

今年5月にビッグデータ解析や予測分析のトップメーカーであるColdLight社を買収し、「ThingWorx Machine Learning」としてサービスに加えた。機械学習と組み合わせ、データから予知保全や製品の改良ポイントのフィードバックなども可能になり、IoTの導入効果が分かりやすくなった。

センサや通信料金が安くなってハードルが下がるなか、どう導入してもらうかがカギになる。当社も積極的に取り組んでいきたいと思う。

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