-SEMICON Japanが今日から始まる。見どころは?
半導体業界における今年のキーワードは「IoT」だ。ぜひ特別展示の「WORLD OF IOT」を見て欲しい。
これまでの半導体業界は、製造装置メーカーや材料メーカーと、機器メーカー、半導体ユーザーとの接点が必ずしも十分ではなく、相互にニーズを表現する展示会の場が必要であった。
そこでWORLD OF IOTでは、ユーザーが最先端技術と将来のIoT技術を披露し、お互いが情報交換する場を提供する。製造装置メーカーと材料メーカー、ユーザーの相互交流の流れが出来ると、技術進化やビジネスが活発になっていく。
-半導体業界がIoTに期待する理由は?
今やあらゆる製品が電子化の傾向にあり、その中には必ず半導体が使われている。使われていないものを探すのが難しいくらいだ。
IoT時代には、あらゆるものにセンサや通信機能が搭載され、インテリジェント化する。センサや通信機能、制御機能など、それらをつかさどる電子部品はすべて半導体。またクラウドでビッグデータを分析する時に使うサーバーや人工知能のコンピュータもすべて半導体の塊だ。
つまり、IoTは半導体が礎となって支えている。半導体がなければIoTは実現できない。IoT市場が大きくなり、関連製品が増えていけば同時に半導体の需要も大きくなる。これから右肩上がりで2ケタ成長は間違いないだろう。
-IoTにおける日本の半導体業界の将来は?
日本の半導体業界の先行きは不透明で暗いと言われることもあるが、そんなことはまったくない。日本の半導体の未来は明るい。世の中の半導体が爆発的に増えるのは確実であり、チャンスだ。
半導体材料は世界の6割、製造装置は3分の1以上を日本企業が占める。半導体メーカーも、かつて1980年代や90年代に比べれば減ったが、半導体デバイスやディスクリート、MEMSなど先端技術のリーディング企業が多く、さらに自動車や電子機器をはじめ、医療機器やセキュリティなどIoTに関連した競争力のあるメーカーも多い。
日本は裾野が広く、バラエティに富み、多様なデバイスを開発・生産できる世界でも稀有な市場だ。川下の需要が増えれば、それに供給するためにデバイスや製造装置、材料の需要が増えていく。
-半導体業界の現在の課題は?
次世代を担う人材の問題がある。今の子供や学生たちは、スマートフォンなど電子機器に囲まれていながら半導体のことが十分知られていない。
半導体は「産業の米」と言われるように、電子機器にはなくてはならないものであることや、IoTで輝かしい未来が拓けていること、日本企業が世界でも強い分野であることをもっと認知してもらい、半導体業界に飛び込んで来てもらわないといけない。そこで今回のSEMICONでは「SEMICON未来college」を開き、学生参加の技術説明会などを行い、認知を広げようとしている。
また、一般の皆様、政治家も含めた幅広い方々に半導体業界の重要性の理解を広め、応援してもらえるようにならないといけない。
例えば半導体製造装置は、市場規模は3兆円から4兆円で、自動車や電子機器などに比べれば小さな規模だが、日本メーカーの国際競争力は非常に高い。しかも、いまや自動車や電子機器は半導体がなければ作れないものになっており、その意味でも半導体製造装置は国の重要な戦略産業である。IoT時代での今後の成長は間違いない。しかしながら、これらの認知度は必ずしも十分でない気がする。
いま各国が自国の半導体産業をバックアップし、強化しようとしている。アメリカはオバマ大統領がシリコンバレーを訪問し、中国では半導体産業に膨大な予算を計上して支援を行う予定だ。韓国はサムスン電子やハイニックスといった大手半導体メーカーが国のGDPを支え、台湾では国策として半導体を振興している。
日本の半導体業界は国際的な競争力があるにもかかわらず、国の支援や一般の人々の認知度が十分ではなく、業界側からの努力が必要だ。
-今後に向けて。
様々な分野で世界のトップに位置する日系半導体企業は多く、今後の日本の将来は明るいと思う。
これからIoT時代を迎え、農業や漁業など第1次産業もスマートアグリなどで使われる半導体の数は増えていく。製造業など第2次産業でもインダストリー4.0でセンサやビッグデータ解析でこれまで以上に半導体が使われる。第3次産業のサービス業も、IoTの活用で半導体をベースとした機器の活用が広がっていく。
いまや半導体は産業の米どころではなく、我々の生活においても米以上に不可欠な存在になっている。日本の産業の活性化を後押しするのは半導体だと信じている。